臨床試験/臨床統計

<リスト> 臨床試験 ~論文・添付文書情報等の的確な理解のために~ [★★]

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「臨床試験」シリーズについて
2018年10月に1本目の記事を書いてから2年もかかってしまいましたが、「臨床試験」に関する記事を一通り書き終えましたので、2020年の終わりということもあり、一端リストで締めることといたします。
「臨床試験」シリーズは、薬に関する臨床試験の論文や添付文書、インタビューフォームなどに記載のある内容を的確に理解することを目的として解説してきました。
論文、添付文書、インタビューフォームとも、どのような点に着目して読めばよいのかについてはどこにも書いてありません。論文は著者(スポンサーとして製薬企業がついている)がアピールしたい方向に誘導するように記載されていることが多々ありますし、添付文書やインタビューフォームは結果が淡々と記載されているだけであります。第Ⅲ相試験の主要評価項目については失敗が許されないことから、対照群(プラセボ群など)に勝てる項目が設定されており、薬の価値として重要な情報とも限りません。このように、情報が煩雑していることから、記載されている文書などに惑わされずに内容を的確に理解するためには、読者が臨床試験に関するきちんとした知識をもち、一つ一つのデータについて見極めていく必要があるかと思います。
私は臨床試験に開発者として関与したことはありませんが、この10年近く、臨床試験の論文や添付文書、インタビューフォームなどに精通してきましたので、そこで得た知識を基に、臨床試験の内容を理解するための事項を本ブログで紹介してきました(私自身まだまだではありますが…)。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
なお、「統計」については解説できる知識がありませんので、理解しておくべき事項だけでも列挙しようと考えていましたが、今年はちょっと時間がありませんでした。また機会があれば紹介したいと思います。

前置きが長くなりすみません。以下リストとなります。
リストと解説
●まずは臨床試験に出てくる数値が何を表しているのかについて説明しました。
臨床試験の論文中の数値について①(平均値と中央値、標準偏差) [★★]
臨床試験の論文中の数値について②(四分位) [★★]
臨床試験の論文中の数値について③(標準偏差と標準誤差) [★★]

●次に「試験デザイン」で記述される用語について説明しました。
(例)多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験
臨床試験の試験デザイン① [★★]
臨床試験の試験デザイン②(無作為化) [★★]
臨床試験の試験デザイン③(並行群間比較試験とクロスオーバー比較試験)[★★]

●「主要評価項目」や「副次評価項目」について、「事前に定められるもの」という観点を含めて説明しました。後半では主要評価項目の臨床試験での位置づけについても説明しました。
臨床試験の評価項目(主要評価項目、副次評価項目、事後解析) [★★]

●実薬群とプラセボ群などの群間で「差がある」ということについて理解するために、「検定(P値)」と「信頼区間」について解説しました。「群間差」の場合と「リスク比」の場合で基準値が異なりますので各々説明しました(群間差の場合の基準値は「0」、リスク比の場合の基準値は「1」)。加えて、差があるような見せかけに注意すべき点として、1時点の値のみではなく推移をきちんと確認すべきことや、ベースライン値をきちんと確認すべきことについて説明しました。
臨床試験 差があるということ① 検定とP値について [★★]
臨床試験 差があるということ② 信頼区間について [★★]
臨床試験 差があるということ③ 補足(群間差、リスク比の場合) [★★]
臨床試験 差があるということ④ 補足(群内での経時変化、ベースラインからの変化量) [★★]

●第Ⅲ相試験(検証的試験)で出てくる「優越性」、「非劣性」、「同等性」について説明しました。
臨床試験 優越性と非劣性 [★★]
臨床試験 非劣性の補足 [★★]
臨床試験 同等性(ジェネリック=後発品の話を含めて) [★★]

ここまでの記事は基礎的な内容になります。
ここから、少し複雑になっていきます。

●検定を繰り返して行うと「P<0.05」となる確率があがってしまうのでよくありません。このような問題である「多重性」について説明し、また多重性を考慮する方法について説明しました。
臨床試験 検定における多重性の問題 [★★]

●第Ⅲ相試験(検証的試験)では症例数がきちんと定められます。なぜ症例数を定める必要があるのかについてはじめに説明し、そのうえでどのように症例数が定められるのかについて説明しました。なお、理解のためには「αエラー」、「βエラー」についての知識が必要のため、そちらの記事を先行して掲載しました。
臨床試験 αエラーとβエラー [★★]
臨床試験 症例数の設定 [★★]

●臨床試験の結果を読む際には、どのような患者さんが対象とされたのかについて、きちんと押さえておくことが非常に重要です(例えば軽度の患者さんが対象なのか、重度の患者さんが対象なのか)。
本記事ではまず、試験に組み入れられる患者さんは「選択基準」と「除外基準」により限定されることを説明しました。そして結果の解釈においては、「どのような患者さんに対して得られた結果であるのか?」を考慮することが重要であることを説明しました。
また、臨床試験では患者さんが「限定」されますが、実際の臨床現場で薬を用いる際には、臨床試験で省かれたような患者さんにも使用していくことになるため、臨床試験の結果をどの程度の患者さんに当てはめることができるかどうか、「外的妥当性」について考慮する必要があることを説明しました。
臨床試験 選択基準と除外基準、外的妥当性 [★★]

(上記記事に関連してRMPについて説明しました)
臨床試験では対象とされずに検討されなかった患者さんなど、不足している重要な事項についてはRMP(Risk Management Plan; 医薬品リスク管理計画)として定められ、薬が発売された後にも実際の臨床で検討されていくこととなります。このRMPについて、本記事で説明しました。
RMP(Risk Management Plan; 医薬品リスク管理計画)[★★]

●解析対象集団のところで出てくるITT、FAS、PPSの用語についてと、これに絡めて「感度分析」について補足しました。後半では欠損値の補完について、LOCF法の説明をしました。
(「優越性」、「非劣性」、「同等性」の説明の後くらいで、基本事項として読んでいただいた方がよかったかもしれませんが、説明していませんでしたので、流れがちょっと途切れますがここで記載しました)
臨床試験 解析対象集団、感度分析、欠損値の補完 [★★]

●「患者背景(ベースライン特性)」の着眼点について説明しました。「選択基準と除外基準」の続きの記事と考えてもらうと流れ的にはよいかと思います。「患者背景」は選択基準、除外基準により組み入れられた患者さんの特徴を数値化したものとなります。臨床試験の結果を解釈する際には、この「患者背景」で示されている患者さんの結果であることを考慮することが重要となります。
また「差があるということ④」の記事でも記載しましたが、有効性の結果の記述として「ベースラインからの変化量」の数値しかないときに、ベースライン値を確認することが重要であることを補足として記載しました。
もう1点、患者背景では「群間でバランスがとれているか」を確認すべきことについて説明しました。
臨床試験 患者背景(ベースライン特性) [★★]

●患者背景を見ると、試験に含まれる患者さんはさまざまであることが分かります。例えば「糖尿病あり」と「糖尿病なし」の患者さんが試験に含まれていたりしますが、主な結果としては全体の結果として記述されます。ただ、「糖尿病あり」と「糖尿病なし」で結果がどのように異なるのかの傾向を把握することは重要であり、患者さんを分けて傾向をみる「サブグループ解析」が行われることがあります。
一方でこの「サブグループ解析」を、薬の利点を述べるために必要以上にアピ―ルするということが以前されていたので、薬の販売促進(プロモーション)においては悪者扱いされています。このことについても後半説明しました。
臨床試験 サブグループ解析 [★★]

●臨床試験での「脱落」についてと、どの程度の脱落が許容されるのかについて説明しました。また、「脱落」が有効性の結果にどう影響するか、についても説明しました。
臨床試験 脱落について [★★]

●「統計学的有意性」(統計学的な有意差が認められたか)と「臨床的重要性」(臨床的な治療効果が得られたか)の違いについて説明しました。
(統計学的に差があるかどうかと、臨床的に十分な治療効果が得られたどうかは、別の問題です)
また、臨床的重要性の指標として用いられるMCID(Minimal Clinical Important Difference, 臨床的に意味のある最小の差)についても説明しました。
臨床試験 統計学的有意性と臨床的重要性 [★★]

ここまでが有効性についての記事となります。

●安全性について、1つ目の記事では用語について、「有害事象」と「副作用」の違い、「重篤な有害事象」と「重度の有害事象」の違い、「MedDRA」、「CTCAE」について説明しました。
2つ目の記事では安全性の補足として、投与量と副作用(有害事象)の関係について説明しました。臨床試験での副作用(有害事象)は、その試験で用いられた投与量・投与回数(投与頻度)におけるものであることに注意が必要です。それを超えると副作用(有害事象)が現れやすくなる可能性もあり、未知の副作用(有害事象)があらわれる可能性もありますので、注意が必要です。
臨床試験 安全性の用語について [★★]
臨床試験 投与量と副作用の関係 [★★]

●個別の薬の情報(臨床試験の結果など)を取得する方法について説明しました。
個別の薬に関する情報収集①(添付文書、IF、審査報告書、RMP、申請資料概要) [★★]
個別の薬に関する情報収集②(論文) [★★]

●臨床試験の論文作成のためのガイドライン「CONSORT(CONSORT声明)」について紹介しました(CONSORT声明は臨床試験のうち、無作為化並行群間比較試験(RCT)のためのガイドラインです)。CONSORTのチェックリストの項目は論文を読む際に注目するポイントになっていますので参考にしてみてください。
臨床試験 CONSORT [★★]

~論文読解練習~
臨床試験の論文読解練習として、新型コロナウイルス感染症治療薬 レムデシビルの論文の解説をしました。

第1回:論文取得、試験概要1(目的、試験デザイン、組み入れ基準(選択基準・除外基準)、投与方法)
第2回:試験概要2(評価項目、サブグループ解析)
第3回:試験概要3(症例数の設定、解析方法)、結果1(組み入れ患者、患者背景)
第4回:結果2(有効性:主要評価項目)
第5回:結果3(有効性:副次評価項目、安全性)

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