「個別の薬に関する情報収集①」の続きです。
①では以下について説明しました。
1. 添付文書
2. インタビューフォーム(IF)
3. 審査報告書
4. RMP(医薬品リスク管理計画)
5. 申請資料概要(CTD:Common Technical Document, コモン・テクニカル・ドキュメント)
今回はこの続きで(6とします)、論文について取得方法も含めて紹介します。
6. 論文
承認時に行われた臨床試験の結果は承認後、論文に投稿され、掲載されることが多いです。
論文には主要なデータが掲載されますが、全てのデータではなく、申請資料概要(CTD)などに掲載されているデータの一部であります。
試験データの読み込みに慣れていない場合、インタビューフォームや申請資料概要(CTD)の内容を理解するのが難しいかもしれません(解説がないので)。
その場合は、ある程度、日本語の論文で慣れておくとよいかと思います。
(ただ、論文では著者や薬を販売している企業が示したい方向に片寄って述べられることもあるので注意が必要ですが)
また、論文のDiscussionにおいて、臨床的有用性などについて述べられることもあるので、インタビューフォームなどとあわせて目を通してもよいかと思います。
ただ、無料で入手できるものは限られていますので、情報源という意味では、無料で入手できる添付文書、インタビューフォーム、審査報告書、申請資料概要(CTD)でカバーできるかと思います。
(古い薬の情報だと、PMDAのサイトに十分な資料が掲載されていない場合があり、その場合は論文を入手する必要があります)
なお、承認後に行われる臨床試験や市販後調査(PMS)などについては、詳細の情報が論文にしか掲載されませんので、情報を得たい場合は論文を取得する必要があるかと思います。
(各企業で一部の情報を提供している場合も中にはありますが)
ここから文献の取得方法について説明していきますが、はじめに臨床試験の有名な医学雑誌を紹介します。
臨床試験が掲載される有名な医学雑誌(海外文献)
以下の医学雑誌は非常に有名なものですので、知っておくとよいでしょう。
・New England Journal of Medicine(NEJM)
・The Lancet
・JAMA(Journal of the American Medical Association)
・BMJ(British Medical Journal)
・Annals of Internal Medicine
(こちらの5つは「世界五大医学雑誌」と呼ばれているようです)
それでは、論文の取得方法について以下紹介します。
海外論文⇒国内論文の順に紹介します。
■海外論文
●Pubmedでの論文取得
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
該当する臨床試験の文献情報が分かっている場合は、Pubmedのはじめの頁にある、「Single Citation Matcher」をクリックし、フォームに情報を入力すればOKです。
文献情報とは、以下のような情報で、添付文書やインタビューフォームの文献リストにも記載されています。
(例)
Germain DP et al. N Engl J Med 2016; 375(6): 545-555
前から、「著者」、「雑誌名」、「年」、「巻」、「号」、「頁番号」
(著者名の最後の「et al.」は「他」という意味ですので、検索ボックスには記載しないでください)
Single Citation Matcherでの入力
Journal:雑誌名を入力 …上記(例)の場合は「N Engl J Med」
Date:年だけでもOK …上記(例)の場合は「2016」
Volume:巻 …上記(例)の場合は「375」
Issue:号 …上記(例)の場合は「6」
First page:はじめの頁番号 …上記(例)の場合は「545」
Author name:著者名 …上記(例)の場合は「Germain DP」
Title words:論文タイトル
(全てを埋める必要はありませんので、著者名や論文タイトルは入れなくてもよいです。例えばJounalとVolume、First Pageのみを入れて検索します。仮に複数の論文が該当すれば、複数出てきますので、該当のものを選べばOKです)
書誌情報が決まっていない論文の場合(doiのみの場合)
論文が公開されたばかりのときは、巻や号、頁番号が決まっていない場合があります。
(雑誌が印刷される前に、データとして先に掲載されます)
その場合はdoiを基に取得します。
doiはDigital Object Identifierの略で、電子データのコードです。
例えば「doi: 10.1056/NEJMoa1510198」の場合、URLとして以下を入力します。
(こちらの例は上記の論文と同じものです)
https://doi.org/(doiコード) とするので、
https://doi.org/10.1056/NEJMoa1510198
とします。
PMIDが分かる場合
PMIDとはPubmedにおいて付加される番号です。
例えば、上記論文では、Pubmedの頁に以下の番号が記載されています。
PMID: 27509102
この番号が分かっている場合、PubmedのURLの最後に以下のように番号を入れれば、該当論文の頁に行くことができます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27509102/
上記いずれも同様ですが、フリーで取得できる文献もあれば、フリーで取得できない場合もあります。
(古い文献の場合はアブストラクトしかみれず、論文へのリンクがない場合があります。この場合も以下「フリーで取得できない場合」として扱います)
フリーで取得できない場合、購入するか、図書館でコピーするかになります。
図書館でコピーするのが安く済むのですが、図書館といっても大学の図書館などになりますので、行くのがなかなか大変です。雑誌によっては大学の図書館にもないものも多々あります。
大学の図書館を探す方法は国内文献も同様になりますので、以下「東京大学OPAC」の紹介を参照ください。
購入する場合ですが、①各論文のサイトで購入する(サイトで登録してクレジットカードで購入)、②文献代行サービスを利用、の2通りあります。
クレジットカードを使用したくない場合は、②のサービスを使用するとよいですが、手数料などかかります。こちらも国内文献と同様ですので、以下で説明します。
■国内論文の取得(一部海外文献の場合も含む)
●国立国会図書館
https://www.ndl.go.jp/
(海外文献はほとんどありませんので、国内文献の取得に利用します)
※現在(2020年7月時点)新型コロナウイルス感染防止のため、「東京本館における抽選予約制による入館制限」を行っているとのことですので、ご注意ください(ホームページを確認してから行った方がよいです)。
東京と大阪にあります。
国内文献はほぼ揃っていますので、行くことができるようでしたら、一番効率的です。
(私も調べものをするときにはよく行きますが、東京の国会図書館にしか行ったことがありません。東京の永田町にあります)
はじめて行く場合は、登録してカードを発行してもらう必要がありますので、身分証明書を持参しましょう。
(詳しくは上記ホームページを確認ください)
通常の図書館と異なり、本が並べてあるわけではなく、図書館内のPCで検索し、閲覧申し込みを行います。
なお、一度に借りられる数が限られています。
上記ホームページより検索することができますので、目当ての書籍・雑誌があるかどうかを事前に確認できます。
コピー(複写)ですが、各自で自由にコピーすることはできず、申し込みをしてコピーしてもらいます。
著作権の関係上、本の場合は著者ごとに半分の頁(例えば1章と2章の著者が異なる場合は、1章で半分、2章で半分の頁しかコピーできません)、雑誌(日本語の論文はこちらに該当)の場合は半分の頁までしかコピーできませんので注意ください。
(雑誌は著者ごとの半分の頁ではなく、雑誌の頁数の半分コピーできるので、調べものするとき、私は雑誌中心に集めています。ただ、雑誌が最新号の場合はたしかコピーできなくなっていたかと思います)
なお、複写料金はホームページを確認ください。
開館時間、複写できる時間、休館日についてもホームページを参照ください。
複写できる時間は開館時間より少し短いですので注意ください。
●東京大学OPAC(大学図書館での取得)
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/
(海外文献も置いてあります)
「東京大学OPAC」では、東京大学で保管されている雑誌や図書を検索でき、他大学のものも検索できます。
大学の図書館には一般の方も入ることができ、コピー(複写)することができます。
ただ、窓口で利用登録など必要かと思いますので、身分証明書は持っておいた方がよいです。
各図書館の開館時間、複写できる時間、休館日などは各図書館のホームページを参照ください。
複写できる時間や領収書が発行できる時間は、開館時間より短いことがあるので注意ください。
また、コピー(複写)の料金についても各図書館のホームページを参照ください。
●書店で購入
新しい雑誌(論文誌)の場合は、書店に置いてあることがあります。
丸善・ジュンク堂書店、紀伊国屋書店、三省堂書店などでは検索サイトがありますので、読みたい文献が決まっている場合は、検索してみるとよいでしょう。
取り寄せなどのサービスも行っていますので、聞いてみるとよいです。
(通販もやっているかと)
●出版社のサイトで購入
読みたい文献(雑誌)が決まっている場合、雑誌の出版社のホームページなどで購入できる場合があります。
●Amazonで購入
運がよければ中古で安く手に入りますので、検索してみるとよいです。
●文献代行サービス
「サンメディア」、「インフォレスタ」など、文献代行を行っている会社様があります。
サイトから入力注文すれば、郵送で送ってもらえますので便利です。
(手数料はもちろんかかります)
私が主に使用しているものを紹介しました(他にも検索できるサイトはたくさんあります)。
会社や大学で購入費用を払ってもらえる場合は、どれを使用してもよいかと思いますが、個人で購入するにはなかなか大変ですので、国会図書館や大学の図書館でコピーするのがお財布的には優しいかと思います(ただ、遠方の方は難しいですよね…)。
いかがでしたでしょうか?参考にしていただければ幸いです。
以上2回にわたり、これまでの臨床試験の知識を活用するための情報源について説明しました。
次回は「CONSORT」について簡単に触れてみたいと思います。
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