これまで、臨床試験の内容を理解するための基本的な内容について説明してきました。
今回はその知識を活用するための情報源について整理してみます。
(長くなるので2回に分けます)
1. 添付文書
まずは各薬の添付文書を確認しましょう(分かり難いですが、最も基本となる内容です)。
臨床試験について大雑把にしか掲載されていませんが、ざっと見て全体像を確認しましょう。
(薬物動態や薬効薬理など含め、全てが大雑把ではありますが…)
詳細は、以下インタビューフォームなどの資料で確認することにします。
取得の仕方などについては、以下に記載しています。
添付文書
https://med-seeker.com/tenbun/
2. インタビューフォーム(IF)
添付文書とセットでみていくとよいかと思いますので、添付文書と一緒にダウンロードしておくとよいです。
5章に個別の試験の詳細がありますので、まずは添付文書に掲載されている試験がどの頁にあるかを確認し、添付文書の記載内容とあわせて確認するとよいでしょう。
インタビューフォームでは選択基準・除外基準が記載されていることが多いため、どのような患者さんに対して検討されているかをおさえておきましょう。
ベースライン値が掲載されていれば、選択基準・除外基準とあわせて確認するとよいです。
(選択基準・除外基準をもとに試験に組み入れられた患者さんがどのような患者さんなのか、実際に数値で表したものがベースライン値です)
そして、有効性を確認する際は、どのような患者さんでその結果が得られたのかを意識してみていきます。
試験がたくさん掲載されていてボリュームが多い場合もありますので、どこから見たらよいか分からない場合は、まずは添付文書に掲載されている試験を探していくとよいかと思います。試験名ではぱっと見分けがつかない場合は、例数や主要評価項目の結果なども参考にして、同じ試験かどうかを見極めていくとよいです。
ただ、中にはグラフや表など詳細を掲載せずに、文書のみで簡単に記載しているインタビューフォームもあります。
(インタビューフォームをどこまで丁寧に作成するかは各製薬企業の作成者によるということがあります)
情報が足らない場合は、該当する試験について、審査報告書や申請資料概要(CTD)、論文を参照する必要がでてきます。
なお、インタビューフォーム(5章のはじめの方)には「臨床データパッケージ」というのが記載されています。
新しい薬が承認されるためには、試験データ(承認申請)を提示して、評価される必要がありますが、その際に提示される臨床試験全てを「臨床データパッケージ」と言います。
試験は「評価資料」と「参考資料」に区分されています。
「評価資料」をもとに薬を世に出してよいかどうかが評価されますので、「評価資料」とされた試験が重要な試験となります。
インタビューフォームの取得の仕方などについては、以下に記載しています。
(取得の仕方は添付文書と同じです)
インタビューフォーム(IF)
https://med-seeker.com/if/
3. 審査報告書
薬が承認される際に臨床試験などの結果がどのように評価されたが「審査報告書」にまとめられています。
審査報告書の前半では各試験のデータ(非臨床のデータも含む)がまとめられ、後半の「機構における審査の概略」の項目で評価内容が記載されています。
「機構における審査の概略」では各内容について、資料を提出した企業の意見(「申請者」と記載されている)と、評価するPMDAの意見(「機構」と記載されている)がまとめられています。
「申請者」は企業にとってやや都合の良い方向で述べているのに対し、「機構」は公平な意見を述べているのが特徴です。「機構」は基本的に統計学的な解析結果に基づいて評価しています。
添付文書、インタビューフォームに記載されていることがきちんと理解できたかどうか、こちらの「申請者」と「機構」のやりとりを読むことで確認できるかと思いますので、是非読んでみてください。
また、審査報告書の前半では各試験の重要データがまとめられており、インタビューフォームとは異なるデータが掲載されていることがあるので、そちらも参考になるかと思います。
(インタビューフォームに詳細が記載されていない場合にも参考になります)
審査報告書の取得の仕方などについては、以下に記載しました(先日アップしました)。
(取得の仕方は添付文書、インタビューフォームと同じです)
審査報告書
https://med-seeker.com/review_information/
4. RMP(医薬品リスク管理計画)
RMPには承認時の臨床試験で明らかにされなかった要検討事項や、副作用などのリスクを管理していくために企業で行われる事項が記載されています。
詳細は以下の記事で紹介しましたね。
RMP(Risk Management Plan; 医薬品リスク管理計画)[★★]
https://med-seeker.com/2019/11/03/rmp/
審査報告書の最後にもRMPの案が記載されていますが、承認後に正式なものが公開されますので、正式なものを確認した方がよいです。
また、随時更新されますので、確認する際には新しいものをダウンロードしましょう。
5. 申請資料概要(CTD:Common Technical Document, コモン・テクニカル・ドキュメント)
インタビューフォームなどに記載された臨床試験などの大元の資料です。
インタビューフォームが簡略化して記載されており、試験概要や患者背景、各データの詳細が知りたい場合、CTDを参照するとよいです。
ただ、膨大なデータですので、慣れていないと使いにくいです。
(何千頁もあるものもありますので、間違ってうっかり印刷とかしないように注意しましょう)
以下にも記載しています。
CTD(Common Technical Document, コモン・テクニカル・ドキュメント)
https://med-seeker.com/ctd/
こちらに加えて、もう少し以下に追記します。
PMDAのサイトでは、以下の1~9のタブに分類されています。
1. 「起原又は発見の経緯及び開発の経緯」等の資料
2. 諸言
3. 品質に関する概括評価
4. 非臨床に関する概括評価
5. 臨床に関する概括評価
6. 非臨床概要(1)薬理
7. 非臨床概要(2)薬物動態
8. 非臨床概要(3)毒性
9. 臨床概要
ただ、こちらの1~9はCTDでの正式な番号ではありません。
例えば「9. 臨床概要」を開くと、「2.7.1」と記載された番号が表示されますが、こちらの番号が正式な番号です(全ての薬でCTDの番号は統一されています)。
CTDはモジュール1~5がありますが、PMDAのサイトに掲載されるのは、モジュール1と2のみです。
上記「2.7.1」のはじめの数字がモジュールに該当し、この場合はモジュール2の一部ということになります。
これまでみてきた有効性・安全性の臨床試験については、以下の番号の箇所が該当します。
2.5…有効性・安全性に関する概要
→こちらはPMDAのサイトのタブ「5. 臨床に関する概括評価」にあたります
2.7.3…有効性の詳細(全試験の評価)
2.7.4…安全性の詳細(全試験の評価)
2.7.6…個別の試験の概要
→この3つはPMDAのサイトのタブ「9. 臨床概要」内にあります
個別の試験の確認ですが、試験方法などについては2.7.6の該当試験の頁をみるとよいです。
有効性の結果について、2.7.6にも掲載されていますが、大雑把に掲載されている場合もあり、2.7.3もあわせて確認するとよいです。
一方、全試験の全体像について大雑把に確認したい場合は、先に2.5を読むとよいです。
2.5には製品開発の根拠や、ベネフィットとリスクなどについても述べられていますので、これまでの製剤に対する位置づけを理解するのにも役立ちます。
(位置づけについては1.5の開発の経緯も確認するとよいです)
今回は長くなりますので、ここまでとします。
次回は続きとなりますが、「論文」について、Pubmedなどでの文献取得についても記載したいと思います。
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