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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 レムデシビル①(機序) [★~★★]

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ややタイミングが遅くなりましたが、新型コロナウイルスについてとりあげたいと思います。
レムデシビルが国内で特例承認されて使用可能になりましたが、その治療効果や安全性については知りたい方が多いかと思いますので、現時点で報告されている内容を紹介していきたいと思います。
まずは一般の方にもなるべく理解できるような内容とし、より専門的な内容はその後で紹介したいと思います。
まずは前置きで、レムデシビルはどのように新型コロナウイルスを抑制するのか、その機序について簡単に説明します。
(治療効果は2つ目の記事で説明しています。同時にアップしました!)

●「COVID-19」、「SARS-CoV-2」とは?
「SARS-CoV-2」は新型コロナウイルスのウイルス名です。
「COVID-19」は「SARS-CoV-2(ウイルス)」により引き起こされる病気の名前(疾患名)です。
レムデシビルの添付文書(薬の説明書)には「SARS-CoV-2による感染症」に対して使用できる旨記載されており、「COVID-19」とは記載されていないので“あれ?”と思われる方がいるかもしれませんが、「SARS-CoV-2(ウイルス)による感染症」=「COVID-19」ということです。

●レムデシビル(ベクルリー)はどのような薬?

新型コロナウイルスの増殖を抑制する薬です。
製品名は「ベクルリー」と言います。

以前、ウイルスに対する薬の話を以下の記事でしており、こちらで説明したのとほぼ同様なのですが、再度簡単に説明します。
ウイルスを標的とした薬の開発-① [★~★★]

ウイルスは増殖するためにヒトの細胞に侵入し、ヒトの細胞が持っている装置を使って増殖します。
ウイルスにも遺伝子がありますが、遺伝子としてDNAを持っている「DNAウイルス」と、遺伝子としてRNAを持っている「RNAウイルス」があります。
新型コロナウイルスは「RNAウイルス」です。
(DNAとRNAの違いについては、「DNA⇒RNA⇒タンパク質(用語解説) [★~★★]」に記載していますが、ここではとりあえず、DNAもRNAもウイルスを増殖するための情報、と理解いただければと思います)

ウイルスがヒトの細胞内に進入した後、ウイルスの遺伝子(DNAまたはRNA)がヒトの細胞核の中に入っていきます。
そして、ヒトの細胞核の中でウイルスの遺伝子(DNAまたはRNA)を増やしたり、ウイルスを構成するタンパク質を増やしたりしていきます。

ウイルスはこのようにヒトの細胞の装置を使って増えていきますが、ヒトの装置のみを使っているかというとそうではなく、ウイルス自身が増殖するための最も基本となる最低限の装置(タンパク質)をいくつか持っています。
ウイルス自身の遺伝子(DNAまたはRNA)には、この最低限の装置を作るための情報を有しています。

その装置の一つに、ウイルスの遺伝子(DNAまたはRNA)を産生する「ポリメラーゼ」というタンパク質があり、ウイルスが増殖するために必須の装置であります。
DNAウイルスでは「DNAポリメラーゼ」、RNAウイルスでは「RNAポリメラーゼ」と呼ばれています。
新型コロナウイルスはRNAウイルスですので、「RNAポリメラーゼ」を持っています。

このことを考慮すると、ウイルス自身が持っている「ポリメラーゼ」を働かせなくすることができればウイルスの増殖を抑制することができます。

レムデシビルは新型コロナウイルスの「RNAポリメラーゼ」の働きを抑制する薬であり、新型コロナウイルスのRNAを作れなくして、ウイルスの増殖を抑制する薬です。

まずは概要的な説明としましたが、いかがでしたでしょうか?
2つ目の記事に、臨床試験における治療効果を紹介しましたので、そちらもお読みいただければと思います。

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