★疾患と薬/薬の開発

パックマンとパックマンではないタンパク質[★~★★]

投稿日:2018年7月1日 更新日:

前回まで、タンパク質をパックマンに例えて説明してきました。

前回の記事(高血圧の説明のとこ)でもパックマンを例に出しましたが、パックマン以外のタンパク質が紛れ込んでいたことにお気づきでしょうか?
下は前回の高血圧の図ですが、レニン(薬1でふさがれているタンパク)やアンジオテンシン変換酵素(薬2でふさがれているタンパク)はパックマンですが、アンジオテンシノーゲンやアンジオテンシンⅡ受容体はパックマンではありません。

これまでパックマンとしてきたのは、DNAの鎖を伸ばす「ポリメラーゼ」であったり、二本鎖のDNAを1本の鎖にする「ヘリカーゼ」であったり、DNAを分解する「DNase(DNアーゼ)」であったり、タンパク質を切断する「レニン」や「アンジオテンシン変換酵素」であったりと、化学反応に関連するタンパク質をパックマンにみたててきました。
これらのタンパク質のことを、正式には「酵素(enzyme)」と言います。
また、酵素に結合して化学反応を受ける物質のことを「基質(substrate)」と言います。DNAポリメラーゼやDNAヘリカーゼの場合、基質はDNAです。レニンの基質はアンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン変換酵素の基質はアンジオテンシンⅠということになります。
通常、これらの基質は酵素により反応を受けますが、薬が結合していると基質が酵素(パックマン)の口に入り込めないので、反応を受けません。なお、酵素に対する薬を「阻害剤(inhibitor)」と呼ぶことがあります。

一方で、アンジオテンシンⅡ受容体など「受容体(receptor)」と呼ばれるタンパク質は、ある物質(リガンドと呼ばれる)が結合することにより構造が変化し、細胞内などに命令(シグナル)を伝える役割をします。アンジオテンシンⅡ受容体のリガンドはアンジオテンシンⅡであり、アンジオテンシンⅡがアンジオテンシンⅡ受容体に結合することで、アンジオテンシンⅡ受容体の構造が変化し、血圧を上げる方向のシグナルを細胞内に伝達していきます。

-補足-
今回は、「細胞内にシグナルを伝達」と単純に記載しましたが、実際には複雑で、細胞内の複数のタンパク質が相互作用していき、最終的に「血圧亢進」などの作用が起こります。(今後具体的な記載もブログ内で出していくかと思いますが、複雑な話となりますので、★★以上の記事で掲載となるかと思います)
-ここまで-

なお、、レニンによって切断されるアンジオテンシノーゲンもタンパク質の1つですが、このタンパク質はおそらく自身では何も行っておらず、血液中を循環しているだけかと思います(違っていたらすみません)。

それ以外に、これまで出てきておりませんが、あるタンパク質とあるタンパク質が直接相互作用するようなタイプのものもあります。

前回までは内容が理解しやすいようにタンパク質をパックマンにみたてて話を進めてきたのですが、ちょっと説明に無理が生じるため、今回範囲を広げました。

ちょっと短いですが、今回はここまでです。
次回ですが、今回の話と類似しますが、薬の「創薬ターゲット分子(タンパク質)」の分類という話をします。

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