大分久しぶりになってしまいました。
もう覚えていないかと思いますが(笑)、薬の探索・開発の続きを書いていきます。
久しぶりなので簡単に復習します。
疾患を大きく分類しますと、ウイルスや細菌など外的要因によるものと、それ以外の内的要因によるものに分類できます。
薬を開発する上で重要となるのが、外的要因、内的要因いずれにおいても、主にタンパク質を阻害するものが薬になるということです。
以前記載しましたが、外的要因の方ではウイルスや細菌が持っているタンパク質が標的となっており、内的要因の方ではヒトの持っているタンパク質が標的となっている、という違いはあります。
↓も復習ください。
疾患(病気)の原因と薬の標的 [★~★★]
ウイルスについて一通り説明したところで、ずっと間が空いてしまいました。
今回は続きで細菌に対する薬の説明をしていきます。
細菌の薬の考え方はウイルスと似ており、細菌が持っており、ヒトが持っていないタンパク質が標的となっています。
理由としては、細菌とヒトが共通して持っているタンパク質を標的とすると、ヒトで機能するタンパク質も阻害されてしまい、ヒトに悪影響がでる(ひどい副作用がでるなど)可能性が高くなるからです。
ヒトが持っていないタンパク質が標的となっていれば、細菌にのみ作用を示します。
これを、「細菌に選択性を有する」などと言います。
★この考え方は非常に重要なので、覚えておいてくださいね!
それでは、ヒトと細菌の違いに着目していきます。
中学生で学んだ理科の授業を思いだしてください。
ヒトと細菌は細胞の作りが異なっています。
ヒトの細胞には細胞壁がありませんが、細菌の細胞には細胞壁があります。
よって、細胞壁を作る(合成する)タンパク質を抑制することで、細胞壁が作られなくなり、それによって細菌が死滅します。
(厳密には細胞壁が薄くなると、外液が細胞内に流入して、死滅します)
「ペニシリン」という薬はご存知でしょうか?
聞いたことがある方も多いかと思います。
世界初の抗生物質でありまして、細胞壁の成分であるペプチドグリカンを作るタンパク質の機能を抑制することで、細菌を死滅させます。
なお、ペニシリンを使用する主な病気としては、肺炎や気管支炎などがありますが、ペニシリンが効かない菌やウイルスによる場合は効果がありません。
このように、ヒトが持っておらず、細菌のみが持っているタンパク質が細菌の薬になりますが、細胞壁以外を標的としたものも結構ありますので、もう1つ紹介します。
水虫の話を以前しまして、メンタックスクリームとクレナフィンの効果の話をしました。
水虫① ぬり薬は何カ月も継続してぬろう[★]
水虫② 爪白癬のぬり薬は役に立つ?[★]
こちらは細菌ではなく真菌です。
考え方は同じで、ヒトが持っておらず、真菌しか持っていないものを標的とします。
メンタックスクリーム(一般名:ブテナフィン塩酸塩)も、クレナフィン(一般名:エフィナコナゾール)も標的は同じです。
ヒトの細胞膜は主にコレステロールでできているのに対し、真菌の細胞膜はエルゴステロールでできています。
よって、ヒトはエルゴステロールを作るタンパク質を持っていないので、エルゴステロールを作るタンパク質が標的となっています。
メンタックスクリームもクレナフィンも、エルゴコレステロールが作られるのを阻害します。
(補足ですが、エルゴステロールを作るタンパク質にもいくつかあり、メンタックスクリームとクレナフィンでは、阻害するタンパク質は異なります)
細菌に対する薬として、細胞壁を作るタンパク質を阻害する薬の例と、細胞膜を作るタンパク質を阻害する薬の例を示しました。
重要なのは、ヒトには作用しないように細菌のみが持っているタンパク質のみを阻害できる薬が開発されているということですので、覚えておいてください。(「選択性」の用語も覚えてくださいね)
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