★血中濃度

ジェネリック医薬品は良品?悪品?[★]

投稿日:2017年9月1日 更新日:

最近ではジェネリック医薬品を進めている薬局が多く、薬を処方されるときに「ジェネリック医薬品にしますか?」などと聞かれることが多いかと思います。はじめての薬局で記入を求められる問診票(アンケート)の中にもジェネリック医薬品の希望についての項目が設けられています。

そもそもジェネリック医薬品とは何でしょうか?

まず、新しい薬を開発するのには莫大な費用と労力、そして年月がかかります。新しい薬の開発では効果がありそうな成分を探し出すところからはじめますが、宝探しのように膨大な労力をかけて探し出し、薬になりそうなものがでてきたら動物実験を行うことになります。そこでもうまくいかないものもたくさんあり、何とか動物実験で効果が見いだせ、安全性にも問題なさそうなものであれば実際にヒトを対象とした臨床試験を行っていくことになります。
このように、長い年月と莫大な費用を費やして薬を開発しますので、その莫大な費用を回収できないと企業としては儲かりません。
そこで新しい薬を開発した企業は薬を独占的に売り出せるように特許を取得します。

薬の特許は特許を出願した日から20年(申請により5年延長できる)とされていますが、出願してから薬が実際に販売されるまでには10~15年程度かかるといわれています。よって、実際に独占的に薬を売り出せる期間は5~10年(申請により5年延長できる)くらいしかありません。この期間を過ぎると特許切れとなり、他の企業が同じ薬を販売できるようになります。そう!。この特許が切れた後に販売される同じような薬がジェネリック医薬品(後発品とも言われています)です。
なお、新たに開発された薬は先発品と言います。

先発品とジェネリック医薬品(後発品)
新たに開発された薬=「先発品」
特許切れとなった後に同様の薬として売り出された薬=「ジェネリック医薬品」または「後発品」

それではなぜジェネリック医薬品が進められるのでしょうか?その理由は先発品に比べて安いことが多いからです。ジェネリック医薬品は新しい薬に比べて開発する費用がかかりませんので、その分安く提供できるのです。保険証を持っていけば基本的には3割負担ですが、残り7割は国が払うことになるため、国の出費をなるべく控えるために、ジェネリック医薬品の使用が進められるようになっています。

最近では新薬を開発するのが大変そうで(莫大なお金と労力がかかるのに、成功するとは限らないので、企業の勢いがないとなかなか難しいです)、ジェネリック医薬品を中心にやっていく企業も多くなっているようです。
個人的な意見としては、新しい薬の開発をしていかないと、日本の開発レベルがどんどん下がってしまいますので、そんなことやっていると未来がないのでは?と思いますが、高齢化社会で医療費が莫大になってしまうので仕方ないのでしょうね。

前置きが長くなりましたが、本題はそんな話ではありません。
このジェネリック医薬品は先発品と比べて問題がないのかどうか?ということが今回の議題です。

薬局でジェネリック医薬品について薬剤師に質問すると、「基本的には先発品と同じお薬ですよ」などと返答が返ってくるかと思います。
そう!。基本的には先発品と同じです。

一方で、薬にちょっとかじったことがあるような知ったかぶりの人が(専門家ではない人)こんな話をしていることがあります。
「ジェネリックって先発品とは違うんだぜ!。たとえば同じコーラでもコカ・コーラとペプシコーラでは違うだろ?製造する工程とか違って実際には違うものだから俺は先発品しか使わないんだぜ!」
この話も嘘ではありませんが、本質的なことが分かっていないと、こういう話が出回ります。

それでは、何が本当なのでしょうか?
まず一番重要となる効果を発揮する薬の成分(有効成分といいます)についてですが、先発品とジェネリックで有効成分は全く同じです。ただし、有効成分の作り方は各企業でまちまちです。…※
(この文がキモとなりますので、あとでまた使います)

大きく違う点ですが、薬は有効成分のみでできているわけではなく、添加物の中に少量混ぜてあります。この添加物を何にするかは各企業が決めているので、先発品と後発品で違います。例えば、添加物には薬の苦みを抑えるものがありますが、先発品と後発品で味が違ったり、また添加物の量も異なったりするので大きさや形が違ったりもします。

味についてはこだわりがある方もいるかと思いますので、「この味じゃなきゃやだ!」という方は先発品にこだわるかと思いますが、そういうところを重視している人は少ないのではないでしょうか?やはり一番気になるのは効果が同じかどうかです。

ここで上記の※をもう一度見直してみます。
※…「有効成分は全く同じです。ただし、有効成分の作り方は各企業でまちまちです。」

これについて考えていきます。

結論から言うと、理論的には先発品でも後発品でも効果は同じと考えられています。
それはなぜか?
同じ有効成分(同じ薬)であれば、有効性と安全性は全て血中濃度で決まるからです。

前回までの記事で何度も繰り返し書いてきましたが、
食事の影響、高齢の方、肝臓・腎臓が悪い方、薬の飲み合わせ、全て血中濃度の増減が問題でした。
「同じ薬で血中濃度が同じであれば、有効性と安全性は全く同じ」
この考え方が全てということになっています。

~まだ読んでない方はこちらの記事を見てね!~
食前?食間?~食事の影響について~[★]
高齢の方、肝臓・腎臓に障害のある方での量の調整[★]
薬と薬の飲み合わせはなぜ怖い?[★]

ジェネリック医薬品は先発品とほぼ同じ血中濃度が出せることを証明したうえで世に出されます。
そのために行われる試験を「生物学的同等性試験」と言います。
この試験で先発品と後発品の血中濃度が比較され、血中濃度の指標であるCmaxとAUCが同等であるかが検討されます。
(正確には許容範囲が定められており、許容できる若干のズレはあります)

インターネットを色々とみていると、添加物が違うから効果が出るまでの時間が違うとか、ジェネリックでは安全性のデータがとられていない、とか色々書かれていますが、
「同じ薬で血中濃度が同じであれば、有効性と安全性は全く同じ」
であり、そのことが生物学的同等性試験で証明されています。
(時間推移でみていますので、効果がでるまでの時間が違うはずもないですね。)

繰り返しますが、理論的には先発品もジェネリックもほぼ同等の効果があり、ほぼ同等の安全性を有しています。
(「ほぼ」と書いたのは、血中濃度に許容できる若干のズレがあるからです。)

私も以前は先発品しか使わなかった時期がありますが、このようなことを知ってからはジェネリックも積極的に使うようにしています。

ただし、大きな違いである「添加物」が人によっては合わない場合もあり、それが副作用や有効性に影響を与えている可能性は否定できません。また、先の※の文書で、
※…「有効成分は全く同じです。ただし、有効成分の作り方は各企業でまちまちです。」
と記載しましたが、後半の太字「有効成分の作り方の違い」により、試験で証明できない若干の違いがでている可能性もあるかもしれません。これについては想像でしかないのですが、製造工程において検出できない程度の微量な何かが残っているなどを想定しています。
個人の相性というのも考えられ、人によっては微細な違いによって合わない、ということもあるかもしれません。
また、思い込みといのも大きいです。プラセボ効果ついて前に説明しましたが、ジェネリックは先発品と違う、という思い込みによって効果に差が出たり、副作用に差が出たりする可能性もあります。
ただ、逆に先発品よりジェネリックの方が相性がよいという方もいるかもしれませんね。

まとめますと、理論的には先発品もジェネリックも有効性と安全性はほぼ同等で、
それは、「同じ薬で血中濃度が同じであれば、有効性と安全性は全く同じ」であるからです。
一方で、若干は相性というものがあるかもしれないということです。

よっぽど先発品との相性がよく、それしか使いたくないという薬がある場合を除いては、ジェネリックを使ってみて、「やっぱり先発品の方があう」、と感じるようであれば先発品に戻すということでも良いのではと思います(経済的に)。

いかがでしたでしょうか?
血中濃度を理解していると、薬について色んなことがみえてきますね!

次回は一般向け血中濃度のシリーズの最後?として、「飲み忘れは努力を水の泡にする!」という話で一旦締めたいと思います。

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