なかなかブログが書けずにすみません。
前回までの2回においては、DNAやRNAを電気泳動で検出することで、DNA分解酵素やヘリカーゼの機能を検討する方法を紹介しました。
今回は、これまでずっと紹介してきたポリメラーゼについて紹介して一旦区切りとします。
今回も放射能を使って検討する方法を紹介しますが、電気泳動ではなく、放射能の量を測定することによって判断していきます。
以前DNAは「A」「T」「G」「C」の4つの文字、RNAは「A」「U」「G」「C」の4つの文字が連結してできているという話をしました。(RNAではDNAの「T」が「U」になる)
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DNA⇒RNA⇒タンパク質(用語解説) [★~★★]
4つの文字というのは、本当の文字なのではなく、実際には物質であり、それらを「A」「T」(「U」)「G」「C」と名付けているということです。
よって、DNAは「A」「T」「G」「C」の4つの物質、RNAは「A」「U」「G」「C」という4つの物質が連結してできているということになります。(部品とみるのが分かりやすいです)
ポリメラーゼはこの4つの部品を連結して、DNAやRNAを伸長する機能をもっています。
ここで、ポリメラーゼの機能をどのように測定するかを考えてみます。
ポリメラーゼによって新しく作り出されたDNAまたはRNAを測定できればよいのですが、先ほどの部品に注目し、この部品に放射能で目印をつけておくことで、測定ができます。
ただ、「A」「T」(「U」)「G」「C」の全てに目印がついたものを使うのはちょっとお金もかかるので、どれか1つに目印をつけておきます。
僕が行っていたRNAポリメラーゼの機能測定では、「U」に放射能の目印がついた部品を使っていました。
([α-32P]-UTPという部品を使いました)
新しくできたRNAの「U」は放射能をもっているので、長くなったRNA中にたくさん放射能が取り込まれます。(下の図の場合は1つのRNAに4つのUが取り込まれています)
上の図では□を1つの試験管(チューブ)としています。
A、U(放射能付き)、G、Cの4つの部品を各10個用意し、左側はRNAを連結させるポリメラーゼを抑制する物質を入れていない場合、右側はポリメラーゼを抑制する物質も入れている場合としました。
(10個というのは例えばです)
左側ではRNAの鎖が2つできたのに対し、右側ではポリメラーゼの機能が抑制されてRNAが全くできなかったとします。
この違いを放射能を測定することで見分けたいのですが、現状□(チューブ)の中には左右ともにU(放射能付き)が10個ずつありますので、この状態で測定すると両方とも同じ10という値になってしまいます。
そこで、長いRNAと部品を大きさで分けることのできるフィルターを用いて分離します。
すると、図のように、大きさ(分子量)の違いで2つに分離されます。
左側のRNAがきちんたできた方は、大きい側にはRNAのみが残り、小さい側に余った部品がいきます。
一方、右側のRNAができていない方は部品しかないので、大きい側には何も残らず、小さい側に部品全てがいきます。
大きい側に着目するとお分かりのように、左側ではRNAにとりこまれた8つの放射能があり、右側では放射能数は0です。
よって、この大きい側の放射能を測定して左右を比較すれば、ポリメラーゼによってできたRNAの量を測定できることになります。
(左は8、右は0と測定されます。なお、8とか0というのは例です)
最後に実際の実験データをお見せします。(僕が行った実験結果)
実はこの実験数回しかやったことがないので、あまりうまくてきていないのですが、こちらの図はRNAポリメラーゼによりRNAが増えたかどうかを時間ごとに測定したものです。
(ポリメラーゼを抑制する物質は入れていません)
時間が経つにつれ、放射能量が多くなっていることから、RNAが時間とともに増えていることが分かります。(20分はおそらくサンプル作成に失敗してしまい、15分より下がってしまいました)
RNAの合成量は反応開始後は直線的に増加していきますが、だんだん増加幅が減っていって、最終的には頭打ちになります。
上の結果だと、大体10~15分くらいで増加のカーブが緩やかになっているので、10分に時間を固定して、ポリメラーゼを抑制する物質を入れて検討してみました。
下の図はポリメラーゼを抑制する物質の量を増やしていったときに、RNAの合成量(放射能量)がどのように変化するかをみたものです。
抑制物質の量が1の場合は先ほどの時間変化をみたときの10分と同程度(80000を少し越す程度)ですが、この物質の量を10、100、500と増やしたときには図のように放射能量(=RNAが作られた量)が少なくなっています。
このように、放射能の量を測定することで、ポリメラーゼの機能が抑制されたかどうかを検討することができます。
いかがでしたでしょうか?
ちょっとブログを休みがちですので、頭から消えてしまった方もいるかと思いますが、3回にわたってタンパク質の機能を測定する、という話をしてきました。
これまでウイルスの話に絞って展開してきましたのでDNAやRNAの話が多くでてきましたが、次回から下の図に戻って、これまでの話を拡張していきます。
(題材が変わるだけですので、考え方はウイルスと同様です)
ということで、この続きは細菌による感染症に話を移しますが、いよいよ花粉症の時期なので、花粉症の薬の話を先にしようかと思います。
(薬の開発シリーズの進みが遅く、中断も入って申し訳ございませんが、ゆっくり行きたいと思います)
※ 3月終わりまで忙しすぎてなかなかブログが書けないのですが、そんなこと言っていると花粉症のシーズンが終わってしまうので、何とか書きたと思っています。
それでは!
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