核酸医薬・RNA関連

核酸医薬・RNA siRNAとRNAi [★★~★★★]

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随分と時間が空いてしまいまして、核酸医薬について何を書いてきたのかも忘れてしまっていましたが、以前の記事を見返しながら、新たな記事を書いていこうと思います。

これまでは核酸医薬のアンチセンスについて、RNaseH依存型アンチセンスとスプライシング制御型アンチセンスについて述べてきました。
今回からは、もう1つの核酸医薬である「siRNA(small interfering RNA)」について触れていきます。

アンチセンスは標的とするRNAに相補的に結合する一本鎖DNAであり、標的RNAの翻訳を抑制するものでした。
siRNAもアンチセンスと同じように標的とするRNAに相補的に結合するものですが、アンチセンスとは異なり、DNAではなくRNAとなります。

siRNAは一本鎖ではなく二本鎖のRNAであり、21塩基前後(A, U, G, Cの文字列で21前後)の長さの短いRNAです。
標的のmRNAに対して相補的な配列となるようにsiRNAを設計しますが、二本鎖のうち標的mRNAに結合する方の鎖を「ガイド鎖」と呼び、もう一本の鎖を「パッセンジャー鎖」と呼びます。

特定のmRNAに対して設計されたsiRNAを細胞内に導入すると、Ago2(Arogonaute2、アルゴノート2)を含むタンパク質複合体に取り込まれます。
続いて、siRNA二本鎖のうち、標的mRNAに結合しない方のパッセンジャー鎖が切断されて取り除かれます。
ここで形成された、Ago2を含むタンパク質と一本鎖RNAの複合体は「RISC(RNA-induced silencing complex)」と呼ばれますが、RISCが標的mRNAに結合すると(siRNAのガイド鎖と結合)、AGO2により標的mRNAが切断されます。
AGO2により切断されたmRNAはその後、AGO2とは別のタンパク質によりバラバラに分解されます。
その結果、標的タンパク質の翻訳が抑制さるということになります。

このsiRNAによる遺伝子抑制機構はRNAi(RNA interference、RNA干渉)と呼ばれ、1998年に線虫ではじめて発見されました。その後2001年にはヒトでもsiRNAによりRNAiが起こることが報告されました。
RNAiを発見した米国のAndrew Z. Fire博士とCraig C. Mello博士は2006年にノーベル医学生理学賞を受賞しており、RNAiの生命現象における重要性の高さがうかがえます。

また、RNAiの機序を利用すると、研究で用いるさまざまな細胞において、特定の遺伝子の発現を容易に抑制(ノックダウン)することができることから、遺伝子の機能を解析する研究に汎用されるようになり、実験手法としても貢献しました。

~補足~
研究において、特定の遺伝子の機能を調べる方法には、遺伝子を過剰に発現させて機能を増強させる方法と、遺伝子を働かなくさせて機能を欠損させる方法があります。
特定の遺伝子を働かなくさせる方法としては、遺伝子そのものを破壊したノックアウトマウスなどを作成して解析する方法がありますが、作成に非常に手間と時間かかります。それに対し、RNAiによる遺伝子のノックダウン(遺伝子の発現量を減少させる方法)では、遺伝子を完全に失わせることはできないものの、容易に短期間で結果を得ることができるという利点あります。
~補足 ここまで~

RNAiの生命現象における重要性についてはmicroRNA(マイクロRNA)とあわせて理解する必要がありますので、次回はRNAiの生理的役割について、microRNAを中心に説明したいと思います。

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