核酸医薬・RNA関連

核酸医薬 RNaseH依存型アンチセンス① [★★~★★★]

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なかなか記事が書けずにすみません。
核酸医薬の中で、まずはアンチセンスについて紹介していきたいと思います。

アンチセンスには、大きく分けて2つのタイプがあり、一つは生体内のRNaseHというRNAを切断する酵素(タンパク質)を利用したもの、もう一つはスプライシングという生体内の機構を利用したものです。
まずは、RNaseHを利用したアンチセンス(RNaseH依存型アンチセンス)について、数回にわたり紹介していきたいと思います。

RNaseH依存型アンチセンスは、mRNAを標的とし、タンパク質への翻訳を抑制します。

アンチセンスは、標的となるmRNAに相補的に結合するように設計された、一本鎖のDNAです。
アンチセンスが標的mRNAに結合すると、mRNAとアンチセンス(一本鎖DNA)の二本鎖が形成されます。
すると、RNaseHという生体内のタンパク質が標的となるmRNAを切断します。
それによりmRNAが機能しなくなり、タンパク質への翻訳が抑制されるというわけです。

RNaseと呼ばれる酵素(タンパク質)は、生体内のRNAを分解する機能を有する酵素の総称でありますが、その中でRNaseHは一本鎖DNAと一本鎖RNAが結合したDNA/RNA二本鎖を認識して、RNAのみを分解するという機能を有しています。
アンチセンスはこの機能を利用し、切断したい標的のmRNAに一本鎖のDNA(アンチセンス)を結合させることで、RNaseHを誘導します。

アンチセンスの話からちょっと脱線しますが、RNaseHは生体内ではどのような場面で機能しているのでしょうか?
生体内においても、一本鎖DNAと一本鎖RNAが結合してDNA/RNA二本鎖を形成している場面が存在します。
最も広く知られているのが、「DNAの複製」(DNAからDNAを作る過程)におけるラギング鎖の生成です。

DNAの複製が行われる際、2本鎖のDNAがほどかれ1本鎖となったのち、プライマーと呼ばれる短いRNAが作られ、そこからDNAの合成(伸長)が行われます。
DNAは5’から3’方向に合成されるため、片方の鎖(リーディング鎖)はDNAポリメラーゼにより連続的にDNAが生成されるのですが、もう片方の鎖(ラギング鎖)では3’から5’方向にDNAを合成することができないため、下図のようにいくつものプライマー(RNA)が作られ、短いDNA断片(岡崎フラグメント)が複数作られていきます。

岡崎フラグメントの間にあるプライマー(RNA)は除去されて、DNAで埋める必要がありますので、ここでRNaseHが活躍するということです。
RNaseHによりDNA/RNAの二本鎖が認識され、RNAが分解された後、その間のギャップがDNAで埋められ連結されることで、ラギング鎖も一本鎖となります。

DNAの複製以外でも、DNAに間違ってRNAが取り込まれて二本鎖DNA/RNAが形成される場面などがあり、RNaseHは二本鎖DNA/RNAを認識して、RNAをのみを分解し除去する役割を担っています。

今回はちょっと短いですが、RNaseH依存型アンチセンスについて、概要とRNaseHの生体内の役割について説明しました。

アンチセンスを設計するうえでは、さまざまな工夫が必要となります。
体の中にはDNAやRNAを分解する酵素(タンパク質)が複数存在するため、DNAやRNAを用いた薬は分解されやすいという問題があります。
そこで、アンチセンス(DNA)では、生体内で簡単に分解されないように、様々な化学修飾をしたDNAが用いられます。
また、アンチセンスは20塩基程度の短い配列が用いられるのですが、標的とするmRNAは数百~数千塩基と非常に長く、その長いmRNAの配列の中からどこの部位を標的とするのか、配列選択も重要になります。
次回から、この辺の話について取り上げていきたいと思います。
それでは。

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