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薬物動態 経口投与と静脈内投与の違い、バイオアベイラビリティ [★★]

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今回は経口投与と静脈内投与の違いについて説明します。
また、それに関連してバイオアベイラビリティについて説明します。

これまで下のような形のグラフを基に説明してきましたが、この形になるのは薬を経口投与した場合です(錠剤やカプセル剤を飲んだ場合です)。

一方で、注射により静脈内投与した場合は下のようなグラフとなります。

血中濃度についてシンプルに考えることができるのは、経口投与した場合ではなく静脈内投与した場合です。
静脈内投与では、薬がダイレクトに血液中に入ります。例えば100mgの薬を静脈内に投与した場合、100mg全量が血液中に入って全身に運ばれます。
一方で経口投与の場合、100mgの薬を投与しても、100mg全量が全身に運ばれるわけではありません。
薬を口から経口投与した場合には、全身に運ばれる前に肝臓を通過しますが、そのときに薬の一部が代謝され、効果を引き起こす有効成分が、効果をもたない形に変換されます。
これを初回通過効果と言います。

血中濃度のグラフをイメージしてみると、静脈内投与では投与した直後の時点で100mg全量が血液中に入った状態となり、そこから薬が代謝されてなくなっていきます。AUCの面積は、この100mgが入ってからなくなるまでの曝露量を示します。

一方で、経口投与では肝臓で初回通過効果を受けますので、100mg全てが全身の血液中に移行するわけではなく、初回通過効果での代謝から逃れた薬が全身に運ばれ、そこから薬が代謝されてなくなっていきます。
仮に80mgが全身に運ばれたとすると、AUCの面積は80mgが入ってからなくなるまでの曝露量を示していることとなります。

薬の血中濃度について考える場合、経口投与では上記の通り、全量が全身に移行しないため、血中濃度に関連する因子を算出するのが困難となります。
(例えば次回以降説明予定の「分布容積」や「全身クリアランス」を精度高く算出するのが困難となります)
よって、血中濃度に関連する因子を精度高く算出するためには、静脈内投与を行う必要があります。
前回、健康成人が血中濃度の基準になると述べましたが、投与の仕方(投与経路)としては静脈内投与が基準となります。

<ワンポイント> 血中濃度の基準は健康成人+静脈内投与

それでは、続いてバイオアベイラビリティについて説明します。
先ほど経口投与の例で100mgを投与して80mgが全身に移行した場合、という話をしましたが、経口投与した薬全量に対して全身に到達した薬の割合を示す数値が「バイオアベイラビリティ」です。「生物学的利用能」とも呼ばれます。
この例の場合は100mg中80mgですので、バイオアベイラビリティは80%(割合で0.8)となります。
記号としては「F」と記載されます。
経口投与時、初回通過効果をどの程度受けるのかについては薬によって異なるため、バイオアベイラビリティ(F)は薬により異なる値をとります。

それでは、各薬のバイオアベイラビリティはどのように算出するのでしょうか?
バイオアベイラビリティを求めるためには、静脈内投与と経口投与の両方を行う必要があります。
静脈内投与した場合には全量が全身に移行しますので、この場合のバイオアベイラビリティを100%とします。
そして、静脈内投与した場合のAUCと経口投与した場合のAUCを比較します。
静脈内投与時のAUCが基準(100%)となるので、
AUC(経口投与)÷AUC(静脈内投与)×100(%)で算出します。
(経口投与と静脈内投与の量が異なる場合には、投与量の補正を行って算出します)

なお、経口剤なのに静脈内投与するのか?と疑問を持たれた方もいるかと思いますが、バイオアベイラビリティを算出している薬であれば、静脈内投与を実際に行って、経口投与した場合との比較を治験で行っています。

最後にバイオアベイラビリティが掲載されるインタビューフォームの項目を示して今回は終わりとします。

~補足~
今回、話を簡単にするため、経口投与してから薬が全身に到達するまでの説明として、肝臓での初回通過効果の話しか出しませんでしたが、実際には肝臓に到達する前に消化管を通過します。この際、消化管に入らずに一部は排出されてしまったり、一部は消化管で代謝されてしまったりもするので、実際には数段階の障害をのりこえて全身の血液中に入っていくことになります。バイオアベイラビリティは(本当のところは)、この数段階をのりこえて血液中までたどり着いた薬の割合のことを言います。

参考書籍
緒方宏泰 編著 第4版 臨床薬物動態学 薬物治療の適正化のために(丸善出版)
(この書籍はまた後に紹介します)
~補足 ここまで~

いかがでしたでしょうか?
次回より薬の血中濃度を決めている因子の話に入ります。
まずは「分布容積」について説明します。
それでは。

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