薬物動態

薬物動態 インタビューフォームの項目、血中濃度の指標 [★★]

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前回は血中濃度の基本的な内容として、以下について記載しました。

<前回のまとめ>
①血中濃度が同じであれば有効性と安全性は同じ(ジェネリック医薬品の話を併せて)
②血中濃度の減少は効果減弱の懸念、血中濃度の増加は副作用の懸念
③薬の血中濃度は食事や併用薬の影響を受けることがある
④薬の血中濃度は肝機能障害や腎機能障害により影響を受けることがある
⇒正常の方と同じ血中濃度となるように投与量・投与間隔を設定すればよい

今回はこれらがインタビューフォーム(IF)のどこに掲載されるかについて紹介するのと、血中濃度の指標について主に紹介し、またその中でいくつか補足していきます。

↓インタビューフォームの取得方法などはこちら
https://med-seeker.com/if/

薬物動態はインタビューフォーム(IF)の7章に掲載されます。
最近、添付文書が新しい形式に変更されまして、それに伴いインタビューフォームの形式も変更されました。ただ、最新の形式への変更が追いついておらず、古いままの薬もまだ多くありますので、一つ前のバージョンとあわせてお示しします。
新しいものは「IF記載要領2018(2019年更新版)」を基に作成されたもので、一つ前のバージョンは「IF記載要領2013」を基に作成されてものです。
(表紙に記載されています)

基本となる血中濃度の情報はAと記載した部分に掲載されます。
2018では1-(2)、2013では1-(3)の「臨床試験で確認された血中濃度」に単回投与時の血中濃度、反復投与時の血中濃度の情報が掲載されます。
(反復投与については、少し後の回で紹介する予定としています)

2013の1-(2)に「最高血中濃度到達時間」という項目がありますが、2018ではなくなっております。
これはおそらく「臨床試験で確認された血中濃度」の中で紹介することが多いからかと思います。

ここで重要な補足です。
血中濃度の基準となるのは「健康成人」のデータであり、「臨床試験で確認された血中濃度」に掲載されます。
そして「健康成人」のデータを基準に、食事や併用薬によりどう変動するか、肝機能障害や腎機能障害ではどう変化するかをみていくこととなります。

<ワンポイント> 血中濃度の基準は健康成人

次に食事・併用薬の影響ですが、こちらはBの項目に掲載されます。

そして肝機能障害や腎機能障害のデータはCの項目に掲載されます。
2013では「臨床試験で確認された血中濃度」に健康成人データと併せて掲載されていましたが、2018では「10. 特定の背景を有する患者」として項目が設けられており、この項目に掲載されます。
(添付文書の新形式版で「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目が定められたことに伴います)

また補足ですが、「特定の背景を有する患者」としては肝機能障害、腎機能障害以外に高齢者や小児などが含まれます(心機能不全など、他の病態を有する患者さんも含まれます)。
高齢者では一般的に生理機能が低下していますので、肝臓や腎臓の機能も低下しています。よって、健康成人とは別に薬物動態(血中濃度)が検討されることがあります。
また、小児では生体機能がまだ発達しておらず、成人と薬物動態が異なるため、別に検討されてることがあります。

ここまでがインタビューフォームの項目についての説明となります。
続いて、血中濃度の指標について説明します。
Cmax、Tmax、t1/2、AUCについて説明しますが、まずCmax、Tmax、t1/2の記号について図をお示しします。

Cmaxは血中濃度の最大値のことで、「最高血中濃度」を表します。
Tmaxは最高血中濃度(Cmax)に到達するまでの時間で、「最高血中濃度到達時間」のことです。
t1/2は「半減期」で、血中濃度が半分になる時間を示しています。
上図ではCmaxの時点から、Cmaxの半分(1/2×Cmax)となるまでの時間がt1/2となります。
なお、さらに半分になるまでの時間も同じでt1/2となります。
(1/2×Cmaxから1/4×Cmaxになるまでの時間もt1/2です)

次にAUCについてお示しします。

AUCは図に示した斜線部分の面積のことで、「血中濃度-時間曲線下面積」と言います。
血中に入った薬物量の指標とされています。
(各時点での血中濃度を累計しています)

AUC0-tの「0-t」はAUCとして算出した時間を示しています。
(この図の場合は0~t時間まで)

この算出ですと、血中濃度を測定した時間までしか面積がないので、その先の時間の面積を省略してしまっていることになり、正確な血中濃度が反映されません。
よって、無限大時間まで血中濃度を測定したとした場合のAUCも算出されます。
それを「無限大時間までの血中濃度-時間曲線下面積」または「無限大時間まで外挿した血中濃度-時間曲線下面積」などと呼び、記号ではAUC0-∞やAUCinfと記載されます。
(「inf」は「infinity(無限大)」の略)

Cmax、AUCが血中濃度を表す指標となっており、関連する時間がTmaxやt1/2で示されます。
「曝露量」という言葉が出てきますが(薬物が血中に曝露した量という意味)、その指標としてCmax、AUCが用いられています。

今回は以上となります。
薬物動態に関するインタビューフォーム(IF)の項目と、血中濃度の指標について説明し、その他いくつか補足してきました。
次回は、経口投与と静脈内投与の違い、バイオアベイラビリティについて説明します。

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