薬物動態

薬物動態 血中濃度の基本的な考え方 [★★]

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薬物動態の初回となりますが、血中濃度に関する基本的な内容から入っていきたいと思います。
今回は一般向けの「血中濃度」の記事(★1つの記事)でも一通り書いている内容ですので、一気に行きたいと思います。

薬の有効性(効果)と安全性(副作用の出方)は血中濃度で決まります。
血中濃度が高いほど効果が現れますが、一方で副作用も現れてきます。
逆に血中濃度を低くすれば副作用が減りますが、逆に効果が弱くなってしまいます。
そのため、効果がある程度見込め、副作用があまりでない、ちょうど中間程度の血中濃度で治療が行われることとなります。

「薬の有効性と安全性は血中濃度で決まる」という関係を利用し、薬物動態試験のみを行うことで新しい薬を製品化できるのが「ジェネリック医薬品(後発品)」です。
(ジェネリック医薬品は先発品と有効成分が同じ薬です)
有効成分が同じであり、血中濃度が既存薬と同じ挙動を示せば、有効性と安全性は同じになります。よって、新しく開発されたジェネリック医薬品は、血中濃度が既存の薬(先発品)と同じ挙動を示すかどうかについて検討されます。
そして、臨床試験において有効性や安全性を確認するということをしなくても製品化できることとなります。
(一部例外はありますが)

↓ジェネリック医薬品については、こちらの記事も参考ください。
ジェネリック医薬品は良品?悪品?[★]

↓ジェネリック医薬品の同等性試験については、こちらの記事も参考ください。
臨床試験 同等性(ジェネリック=後発品の話を含めて) [★★]

ここまでよろしいでしょうか?
「血中濃度が同じであれば有効性と安全性は同じ」ということをおさえていただき、次に進みます。

次は血中濃度が変化する、ということを考えていきます。
血中濃度が下がると効果が減弱します。逆に血中濃度が上がると副作用があらわれやすくなります。
このことから、治療においてはいつも血中濃度を同じところ(有効治療域)にもっていく必要があり、そうなるように薬の「用法及び用量」(投与量や投与間隔)が決められます。

それでは薬の血中濃度が変動する要因として、どのようなことに気を付けなければならないでしょうか?
薬の血中濃度を変動させるものとして、身近なものに「食事」があります。
薬局で薬をもらう際、「食事と一緒に飲んでください」とか、「食間(空腹時)に飲んでください」とか言われることがあるかと思いますが、それは食事によって血中濃度が変動する薬があるからです。

このことから、血中濃度が食事に影響を受ける薬の場合は、添付文書の「用法及び用量」や「用法及び用量に関連する注意」などで、服用する時間(食後なのか、食間なのか)や、どの程度影響されるのかについて明記されることがあります。
また、インタビューフォームには「食事の影響」について掲載する項目が設けられており、検討されていれば、血中濃度の変動について記載されます。

もう1つ、薬局で薬をもらう際によく聞かれることとして、「現在服用している薬はありますか?」という質問をよくされます。
それは、他の薬により血中濃度が変動する可能性があるからです。
これを「薬物相互作用」と言います。

図のように、例えばAとBの薬を併用した場合、片方の薬の血中濃度のみが変動する場合もありますし、両方の薬の血中濃度が変動する場合もあります。また、血中濃度は増加する場合もあれば、減少する場合もあります。
併用に注意すべき薬については添付文書の「相互作用」の項目に明記されます。また、インタビューフォームには「併用薬の影響」について掲載する項目が設けられており、検討されていれば、血中濃度の変動について記載されます。

ここまでよろしいでしょうか?以下について説明してきました。

<ここまでのまとめ>
①血中濃度が同じであれば有効性と安全性は同じ(ジェネリック医薬品の話を併せて)
②血中濃度の減少は効果減弱の懸念、血中濃度の増加は副作用の懸念
③薬の血中濃度は食事や併用薬の影響を受けることがある

今回はもう1点、血中濃度が変動する要因として、肝機能や腎機能の低下について説明します。
体の中に入った薬が体の外に出ていく過程(排泄という)には、肝臓と腎臓が関与しています。
薬は糞や尿として出ていきますが、その前に肝臓で一部処理され(代謝という)、有効成分が異なる物質に変換されます。
(肝臓は解毒の作用があり、有害な物質を毒性の低い物質に変換します。薬も毒とみなされ、肝臓で一部処理されます)。
また、尿として薬が出ていく際には腎臓が機能しています。

なお、薬の全てが肝臓で処理されるかというとそうではなく、処理された「代謝物」と、処理されなかった「未変化体」がそれぞれ尿や糞として出ていきます。

このことから、肝臓や腎臓が悪い患者さんでは、薬が外に出ていく機能が低下しておりますので、正常の方に比べて血中濃度が高くなる場合があります。
(血中濃度が変動する要因はいくつかあるため、肝臓や腎臓が悪くなることにより、逆に血中濃度が低くなることも場合によってはあります)
よって、肝臓や腎臓が悪い患者さんでは血中濃度がどのように変動するのか、検討されることとなります。

血中濃度が上昇した場合の対処ですが、「血中濃度が同じであれば有効性と安全性は同じ」であることを考慮し、投与量を減少したり投与間隔を延長したりすることで、正常の方と同じ血中濃度を示すように調節されます。

ポイント:血中濃度が正常の方と同じになるように、投与量や投与間隔を設定すればよい

そして、肝臓や腎臓が悪い患者さんに対する「用法及び用量」が、正常の方とは別に添付文書に設定されたりします。
なお、極端に血中濃度があがってしまう患者さんでは危険ですので、添付文書上「禁忌」とされる場合もあります。

今回はここまでとなります。以下まとめです。

<今回のまとめ>
①血中濃度が同じであれば有効性と安全性は同じ(ジェネリック医薬品の話を併せて)
②血中濃度の減少は効果減弱の懸念、血中濃度の増加は副作用の懸念
③薬の血中濃度は食事や併用薬の影響を受けることがある
④薬の血中濃度は肝機能障害や腎機能障害により影響を受けることがある
⇒正常の方と同じ血中濃度となるように投与量・投与間隔を設定すればよい

いかがでしたでしょうか?
次回ですが、「インタビューフォームの項目(今回の内容がどこに掲載されるか?)」、「血中濃度が変動する特定の患者さんについての補足」、「血中濃度の指標」について説明します。

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