臨床試験/臨床統計

RMP(Risk Management Plan; 医薬品リスク管理計画)[★★]

投稿日:2019年11月3日 更新日:

まずは前回の復習をさらっと!

臨床試験に組み入れられる患者さんは、選択基準と除外基準に合致した限られた患者さんでありますが、実際に薬を使用するのはより広い患者さんであるため、注意が必要である旨をお話しました。

高齢者や、重度の肝機能障害や腎機能障害があるなど、薬を使用することによるリスクの高い患者さんは臨床試験から除外されますが、薬が承認されて販売された後は、リスクが高い患者さんにも使用されることになります。
よって、それらの患者さんに対する薬の効果や安全性について、市販後に情報を収集していく必要があります。

また、臨床試験の結果、安全性の結果が曖昧であった事項などについても更なる調査が必要となります。

例えば、ある患者さんでは薬を服用した後に心不全が認められたが、薬との関連性があるかについては明らかにならなかった場合、などです。

このようなことから、薬が販売された後に調査すべきことについて、プランが立てられることになります。それを、「RMP(Risk Management Plan; 医薬品リスク管理計画)」といいます。

実際に見ていただいた方が早いので、PMDAのサイトからダウンロードしてみましょう。

<RMPの取得>
1. PMDAのサイトに行きます。
↓こちらが検索ページとなっています。http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

2. 検索ページの左上に「一般名・製品名(医薬品の名称)」とあるので、こちらに薬の名前を入れます
例えば、インフルエンザの薬「ゾフルーザ」の場合、製品名が「ゾフルーザ」で、一般名は「バロキサビル マルボキシル」ですので、どちらを記載しても構いません。

3. ちょうどその下に、「検索結果一覧で表示する文書を選ぶ」とあるので、「医薬品リスク管理計画(RMP)」にチェックが入っていることを確認します。

4. その頁の一番下にある「検索」ボタンをクリックします。

5. 検索結果が表示されるので、「RMP」のところからファイルをダウンロードします。

ーRMPの取得 ここまでー

2頁目に表形式で概要が記載されていますので、こちらの用語を説明していきます。

1.1と1.2に記載されているのが、市販後の検討事項となります。
1.1は副作用などの安全性について、1.2は有効性(効果)についてです。

そして、1.1の検討事項を基に、どのような調査や対策を行っていくか、その内容が2~4に記載されています。
2は安全性についての調査、3は有効性についての調査、4は副作用などによるリスクを最小限にとどめるために行っていく活動となります。

もう少し細かくみていきます。

<1の検討事項について>
1.1 安全性検討事項
以下3つの項目があります。

①重要な特定されたリスク
⇒臨床試験で認められた副作用などで、注意喚起の対策が必要になるなど、特に重要となるリスクが挙げられています。
インフルエンザの薬であるゾフルーザのRMPでは、特に注意すべき副作用である「ショック、アナフィラキシー」と「出血」が挙げられており、注意喚起が必要とされています。
(特に注意すべき副作用は、頻度が高いということではなく、起きると重大なものです)

②重要な潜在的リスク
⇒臨床試験の結果、曖昧であったリスクが挙げられます。上記冒頭で心不全の例を述べましたが、薬との関連性が臨床試験では明らかにならなかったものなどが挙げられます。

③重要な不足情報
⇒こちらも上記冒頭で述べましたが、臨床試験では高齢者や重度の肝機能障害、重度の腎機能障害などの患者さんが除外されますが、臨床試験で対象とされなかった患者さんに対する安全性や効果についても情報を取得することが重要となります。このように、臨床試験の情報のみでは不十分なものが「重要な不足情報」に挙げられます。

1.2 有効性に関する検討事項
有効性についても、行われた臨床試験のみでは情報が不足していることが多々あります。
インフルエンザの薬であるゾフルーザの例ですが、「薬剤感受性の変化」という項目が挙げられています。
インフルエンザでは、ウイルスが薬に対する耐性を持ち、効かなくなっていく可能性がありますが、行われた臨床試験のみでは検討が不十分のため、検討すべき事項として挙げられています。

<2~4の活動について>
市販後に行われる調査としては、「市販直後調査」、「使用成績調査」、「特定使用成績調査」、「製造販売後臨床試験」などがあります。(用語について、以下簡単に記載します)
また、副作用などによるリスクを最小限に留めるための活動として、冊子などの資料を提供することで副作用に対する注意喚起を促す、などが行われており、そのような活動も計画として定められます。

それでは用語について、以下簡単に説明します。

●市販直後調査
新しい医薬品が販売された後、6ヵ月間行われる調査です。
薬を販売している製薬企業は、薬を実際に使用する病院などに対して、薬を適正に使用するための情報を提供します。
また、薬を使用している病院から、患者さんにあらわれた副作用(重篤なもの)の情報を報告してもらいます。

具体的には、市販直後調査の期間中、製薬企業の担当が病院などを回り、
・該当する薬が市販直後調査の対象であり、その期間中であること
・重篤な副作用があらわれた場合は、製薬企業に報告していただきたいこと
について説明します。
必要に応じて、注意喚起も同時に行います。

はじめの2ヵ月はおおむね2週間に1回、その後の4ヵ月はおおむね1ヵ月に1回説明が行われます(FAXやメールなどによる場合もあります)。

問題となる副作用の情報が得られた場合には、安全性の対策措置がとられることがあります。
ブルーレターと呼ばれる安全性速報や、イエローレターと呼ばれる緊急安全性情報が厚生労働省の指導のもとに作成され、配布されることもあります。

●使用成績調査、特定使用成績調査
実際の臨床現場(実臨床)における調査です。もう少しかみ砕くと、通常の日常診療におけるデータを収集して調査します。
臨床試験と同じように、目的や症例数、評価項目が定められます。
目的としては、
・使用実態下における安全性と有効性の情報収集
・高齢者(65歳以上)における安全性と有効性の情報収集
(臨床試験で対象とされなかった患者の情報収集)
などがあります。

評価項目としては、「重点評価評価項目」が定められることがあります。
・重篤な感染症
・重篤な過敏症
・悪性腫瘍
など、起こると重大なリスクや、臨床試験で曖昧であった副作用が定められたりします。

なお、「使用成績調査」では対象とする患者が限定されないのに対し、「特定使用成績調査」は対象とする患者が「高齢者」や「妊婦」、「腎機能障害の患者」など条件が定められたもの、とされています。

●製造販売後臨床試験
製造販売された後に行われる臨床試験です。
「特定使用成績調査」は日常診療における調査でしたが、「製造販売後臨床試験」では日常診療では得ることのできない有効性や安全性に関する情報を収集するために行われる、とされています。
製造販売後臨床試験は、承認された(添付文書に記載された)効能・効果、用法・用量に従い行われます。
薬が承認される前から行われている臨床試験を製造販売後も継続する場合、製造販売後臨床試験として行われたりもします。

各用語について簡単に説明しました。
補足ですが、上記のように、市販後に行われる調査を「PMS:Post Marketing Surveillance」と呼びます。

なお、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)から「3分でわかる!RMP講座」という資料が以下よりダウンロードできますので、参考にしてみてください。

https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html

PDFへの直リンク
https://www.pmda.go.jp/files/000229902.pdf

今回は臨床試験の内容からちょっと内容がそれましたが、次回から臨床試験の内容に戻ります。
臨床試験の内容も終盤に入ってきており、説明してなかったことを書いていきます。
次回は用語解説っぽくなりますが、解析対象集団(ITT、FASなど)について説明します。

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