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臨床試験 同等性(ジェネリック=後発品の話を含めて) [★★]

投稿日:2019年6月9日 更新日:

2回にわたり、優越性と非劣性の話をしてきましたが、もう一つ「同等性」について理解しておく必要がありますので、それについて説明します。

はじめに優越性と非劣性の復習も兼ね、信頼区間の図を提示します。

優越性と非劣性については大丈夫ですね?
同等性の場合は、両側に閾値が設けられるのが優越性、非劣性と異なる点です。
同等性マージン内に信頼区間が収まれば、同等性があると言えます。

それでは、同等性はどのような場合に検討されるのでしょうか?
「新薬 vs プラセボ」では新薬の有効性がプラセボよりも勝っていることを示す必要があるため、優越性が検討されるということでした。
「新薬 vs 既存薬」ではとりあえず既存薬の効果に負けないことが言えればよいので、非劣性が検討されるということでした。
それでは同等性は?

同等性は、2つの薬が同じであることを示すのに使われます。
劣っていてもいけないのは非劣性と同様なのですが、逆に勝っていてもいけない場合に用いるのが同等性です。

最も使われるのがジェネリック医薬品(後発品)の試験です。
血中濃度シリーズでジェネリックの説明を前にしましたが、ジェネリックはある薬の特許が切れた後、同じ有効成分の薬を他の製薬メーカーが作り、それを安く売りだした薬です。
ただ、各製薬メーカーで製造方法は異なってきますので(製造方法は公開されていないので、同じ方法で他社が作ることはできない)、作った薬が先発品と同じであることを示す必要があります。
このとき、同等性試験が行われ、同等性が検証されることになります。

↓以前掲載したジェネリックの説明はこちら
ジェネリック医薬品は良品?悪品?[★]

先発品とジェネリック(後発品)の同等性試験では、血中濃度が同じであるかどうかが検討され、有効性については検討されません。
上の(以前掲載した)ジェネリックの記事にも記載しましたが、
「有効成分が同じであれば、有効性と安全性は血中濃度で決まる」
言い換えると、
「有効成分が同じで血中濃度が同じであれば、有効性と安全性は同じ」
であることが前提となっているため、血中濃度のみ検討されます。

~補足~
バイオシミラー(バイオ後発品)と呼ばれるタンパク質を有効成分とした薬では、ちょっとした作り方の違いで有効性も大きく変動する可能性があり(血中濃度が同じであっても)、有効性についても同等性を示す必要があります。
~補足 ここまで~

ジェネリックの同等性については、血中濃度の指標であるAUCやCmaxについて、90%信頼区間(95%信頼区間ではなく)が評価に用いられ、同等性マージンに収まるかどうかが検証されます。

(AUC、Cmaxについては「食前?食間?~食事の影響について~[★]」で説明しています。一応復習で以下図を示しておきます)

AUCで評価する場合は、先発品と後発品のAUCの比を算出し、比の90%信頼区間が0.80~1.25にあれば同等と判定します。
Cmaxも同様で、先発品と後発品のCmaxの比を算出し、比の90%信頼区間が0.80~1.25にあれば同等と判定します。
(「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」で定められています)

念のためですが、比は、
後発品の値(AUCやCmax)÷先発品の値(AUCやCmax)
で算出したものです。

前に記載しましたが、群間差を検討する場合は0が基準になりますが(差がない場合0なので)、比を検討する場合は1が基準になります(後発品と先発品が同じ値であれば1なので)。

↓こちらの「リスク比の場合」で説明しました
臨床試験 差があるということ③ 補足(群間差、リスク比の場合) [★★]

お分かりになりましたでしょうか?
3回にわたり、優越性、非劣性、同等性の説明をしました。

次回は引き続き有意差(P値)がらみの話で、検定の多重性の問題について説明します。

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