臨床試験/臨床統計

臨床試験の試験デザイン③(並行群間比較試験とクロスオーバー比較試験)[★★]

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すみません。記事がかなり中途半端な状態にもかかわらず、大分時間が空いてしまいました。
新年1回目の記事が2月になってしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。

さて、自分でも何を書こうとしていたかを忘れてしまいましたが、ちょっと前々回からの記事を再度見直しながら、続きを書いていきます。

まず、↓の文書をみても、初めての方には何のこっちゃ?ということかと…ということで、この用語を説明中でした。
「多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較試験」…冒頭文としていました。

そして、
①プラセボ対照試験、実薬対照試験、非対照試験
②多施設共同試験、単施設試験
③二重盲検試験、単盲検試験、非盲検試験(オープンラベル試験)
の①~③については前々回説明し、

④無作為化(ランダム化)、非無作為化(非ランダム化)
について前回説明しておりました。

今回は残りの「並行群間比較試験」の部分を説明しますが、それと対比されるのが「クロスオーバー比較試験」ですので、この2つを説明します。

⑤-1「並行群間比較試験」
こちらは単純で、例えば患者さん100人を実薬群50人とプラセボ群50人に無作為化し、その後実薬による治療効果とプラセボによる治療効果を、同時に検討する試験です。
(この例のように無作為化をした場合は「無作為化、並行群間比較試験」となりますね。無作為化ではなく、例えば先生が恣意的に2つの群に分けて、2つの群を同時に検討した場合は「非無作為化、並行群間比較試験」となります)

以下のイメージです。

並行群間比較試験では、ある患者さんでは実薬のみ投与し、ある患者さんではプラセボのみ投与することになります。
患者さんごとに薬の効果や副作用は異なってきますが、一人の患者さんで実薬とプラセボの両方を検討できないのが欠点となります。

⑤-2「クロスオーバー比較試験」
クロスオーバー比較試験では並行群間比較試験とは逆に、同じ患者さんに実薬もプラセボも両方投与して、両方の効果を検討する試験となります。
例えば、実薬を4週投与して実薬による効果をまず検討します。その後プラセボを4週投与してプラセボによる効果を検討します。
この逆の順序の群も設け、プラセボを4週投与し、その後に実薬を4週投与する群も設けます。

以下のイメージです。

図を見てお分かりかと思いますが、休薬期間というのが設けられています。例えば「実薬投与→プラセボ投与」の群で休薬期間を設けなかったとすると、プラセボを投与している期間においても実薬の効果が残ってしまっていることがあり、プラセボの効果をきちんと検討できないからです。

クロスオーバー比較試験では、同じ患者さんに対して実薬とプラセボ両方の効果を検討できるのがメリットですが、もちろんデメリットもあります。
まず、休薬期間を設けたとしても、先に投与した薬の効果が持続して残ってしまうこともあり、結果が正しく得られないこともあります。また、休薬期間の設定が必要であり、試験の期間が長引いてしまうという欠点もあります。

~整理5
冒頭文の「並行群間比較試験」の箇所には、
「並行群間比較試験」「クロスオーバー比較試験」のいずれかが入ります。
例えばクロスオーバー比較試験の場合は、
「多施設共同、無作為化、プラセボ対照、非盲検、クロスオーバー比較試験」
などとなります。

~⑤の英語表記~
並行群間比較試験
…parallel group trial(study)
クロスオーバー比較試験
…crossover trial(study)

いかがでしたでしょうか?
臨床試験の試験デザインについて、3回にわたり解説しました。
次回は臨床試験の「主要評価項目」と「副次評価項目」について説明します。

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