★疾患と薬/薬の開発

内的因子による疾患に対する薬の開発-①[★~★★]

投稿日:2018年6月20日 更新日:

今回から内的要因による疾患の話をしていきます。

↓毎回お示ししている図です。

ヒトの生体内は非常に多くの物質の化学反応により厳密に制御されています。
その中で中核の役割を担っているのが「タンパク質」です。
前にお話しましたが、DNAはタンパク質の設計図です。
ヒトではDNAの遺伝情報を基に約10万種類のタンパク質が作られます。

この約10万種のタンパク質が生体内で働くことで、生体内の反応系が厳密に制御されています。
それにより、ヒトは「正常」の状態を保つことができるのですが、ストレスや生活習慣、紫外線など様々な要因により、タンパク質を主とした生体内の反応系が少しずつ崩れ、「異常」が少しずつ生じていきます。
少しの「異常」であれば生体内の反応系により修復されるのですが、「異常」が重なってしまうと修復が難しくなり、「疾患」という表現形で現れてきます。

例えばがん細胞は1日5000個できると言われていますが、正常の状態であれば生体内の反応系により除去されていきます。しかし、体の免疫力が何らかの原因に低下している場合などでは、がん細胞が生体内から除去されず、生き残ってしまうことがあります。そうなるとがんが進展してしまいます。

薬の本質は、体内で異常となった反応系を少しだけ調整する役割をするものではないかと私は思っています。
薬により生体内の反応系を大きく変化させてしまうと、疾患と関係のない反応系にも変化が生じてしまい、それが副作用となってあらわれてしまいます。
よって、薬というのは副作用があらわれない程度の小さな変化で、異常となった反応系を少しだけ元に戻す、というのが本来の使い方であると思っています。
大きく変化したものを薬で元に戻すのは困難ですので、大きく変化したものについては手術などの外科的治療に頼らざるを得ないのかと思います。

よく、「がん」の薬は毒性が強く副作用があらわれやすいとか言いますが、それは「がん」という病気が表面あらわれた時点で、疾患がかなり進行してしまった状態であるからだと私は思っています。
進行した病気を食い止めるためには、それだけ強い薬(またはヒトに害が及ぶくらいの多量の薬)を使う必要があり、それは「がん」に限ったことでないと思います。
逆に言うと、「がん」という疾患は、軽いうちは表面にあらわれにくい疾患であり(先に記載しましたが、1日5000個のがん細胞ができても何も感じませんし)、進行してから発見されて治療することになるため、強い薬を使わざるを得ないのかと思います。

ちょっと話を戻します。生体内で機能する約10万種類のタンパク質はそれぞれの役割を持っており、例えば血圧を調整するタンパク質もあれば、免疫を調整するタンパク質もあります。先ほどの「がん」に関連するタンパク質としては、細胞の増殖を調整するタンパク質などがあります。
よって、疾患ごとに関与するタンパク質は異なっており、各疾患の亢進に関与しているタンパク質の機能を抑制できる物質が「薬」となります。

ちょっと総論だと分かり難いですので、今回は生活習慣病の一つである「高血圧」を例にとって説明していきたいと思います。

高血圧になると心臓病や脳卒中が起こりやすくするため、早めに正常な状態に戻す必要があります。
血圧の機序として有名なのが「レニン-アンジオテンシン系」と言われる反応系です。

図を簡単に説明します。
この図は血圧を上昇する機序ですが、まず「アンジオテンシノーゲン」と呼ばれるタンパク質の一部分が、「レニン」というタンパク質によって切断されます。切断された部分は「アンジオテンシンⅠ」と呼ばれています。
「アンジオテンシンⅠ」はさらに「アンジオテンシン変換酵素」と呼ばれるタンパク質により切断され、「アンジオテンシンⅡ」となります。
この「アンジオテンシンⅡ」が細胞の表面に存在する「アンジオテンシンⅡ受容体」というタンパク質に結合すると、血管が収縮したりして、血圧が上昇します。
(カタカナ言葉がややこしいですので、難しく感じる方は「アンジオテンシノーゲン」を「タンパク質A」、「レニン」を「タンパク質B」、「アンジオテンシン変換酵素」を「タンパク質C」などと読み替えていただくと分かりやすいかと思います)

血圧は高くても低くてもよくないですので、このレニン-アンジオテンシン系もちょうどよい程度で機能するとよいのですが、何らかの要因により生体内のバランスが崩れて高血圧となったときには、このレニン-アンジオテンシン系が亢進しています。

このことを踏まえると、高血圧を抑制するには、レニン-アンジオテンシン系が働かなくすればよいことになります。
上の図では、「アンジオテンシンⅡ」ができてしまうと、「アンジオテンシンⅡ受容体」に結合して血圧が上昇してしまいますので、「アンジオテンシンⅡ」ができないように、「レニン」や「アンジオテンシン変換酵素」が働かないようにすれば血圧の上昇を抑えられます。

「レニン」や「アンジオテンシン変換酵素」はタンパク質ですので、以前示したようなパックマンのような構造をしています。
このパックマンの口の部分が反応に関わる部位ですので、この口をふさぐことのできる物質が高血圧の薬となります。

「レニン」を阻害する薬として「ラジレス(一般名はアリスキレンフマル酸塩)」があります。
「アンジオテンシン変換酵素」の機能を阻害する高血圧薬は様々なものが開発されております。
Googleの画像検索で「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」「一覧」のキーワードで検索すると、表がでてきますので、興味のある方は検索してみてください。

血圧の薬について、もう1例紹介します。
先のレニン-アンジオテンシン系の中でもう1つ薬の標的となる箇所があります。
「アンジオテンシンⅡ」が「アンジオテンシンⅡ受容体」に結合すると血圧が上昇してしまいますが、結合できなければ血圧は上昇しません。
よって、この「アンジオテンシンⅡ受容体」に結合し、「アンジオテンシンⅡ」が結合できないようにすることができる物質も高血圧の薬となります。

このタイプの薬は「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)」と呼ばれています。
こちらも、「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬」「一覧」などのキーワードで検索すると表がでてきますので、興味がある方は検索してみてください。

今回は高血圧を例にとって説明しましたが、疾患の促進に関与するタンパク質を抑制することができる物質が薬となります。

高血圧以外の疾患でも考え方が同じことをもう少し説明したいと思いますので、次回は他の疾患を例にとって引き続き説明していきます。

それでは。

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