★データで読み解く

花粉症の薬のおはなし③ [★~★★]

投稿日:2018年4月29日 更新日:

また少し間が空いてしまいすみません。
ビラノアとアレグラについて、最後までまとめていきます。
データが多くて読み解くのに結構難しいかも!?ということで、★~★★の記事としました。

<鼻症状について>
前回までTNSS(鼻症状合計スコア)で話を進めてきましたが、このスコアは4つの鼻症状スコアを合計したものです。(前々回にお話しましたね)

TNSS(鼻症状の各症状スコアの合計)…0~15点
①鼻汁…0~4点
②くしゃみ発作…0~4点
③鼻閉…0~4点
④鼻内そう痒感…0~3点

鼻の症状でも嫌な症状って人によって異なりますよね?
それなので、この①~④を分割してみてみましょう。

①鼻汁(4点満点)
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…2.19、2.11、2.07、2.04、2.00
・ビラノア群…2.27、1.96、1.98、1.99、1.97
・フェキソフェナジン群…2.25、2.06、2.02、1.99、1.94

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.09、-0.12、-0.15、-0.20
・ビラノア群…-0.31、-0.29、-0.28、-0.30
・フェキソフェナジン群…-0.19、-0.23、-0.26、-0.31

ビラノアでは1~3日の早期から効いてくるというのはTNSS合計点と同様の傾向ですね。
ただ、4点満点のうち-0.31です…。

ちなみに、この4点満点は以下のように決められています。
4点…1日に鼻をかむ回数21回以上
3点…20~11回
2点…10~6回
1点…5~1回
0点…1回未満

②くしゃみ発作(4点満点)
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…1.55、1.45、1.45、1.44、1.43
・ビラノア群…1.55、1.30、1.32、1.34、1.31
・フェキソフェナジン群…1.50、1.28、1.28、1.28、1.29

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.10、-0.10、-0.10、-0.11
・ビラノア群…-0.25、-0.22、-0.21、-0.23
・フェキソフェナジン群…-0.22、-0.22、-0.22、-0.21
ビラノア、アレグラ共に1~3日の早期から若干効いてくるというとこでしょうか?

こちらの4点満点は以下のように決められています。
4点…1日にくしゃみ発作数21回以上
3点…20~11回
2点…10~6回
1点…5~1回
0点…1回未満

③鼻閉…0~4点
個人的には嫌な症状ですが、こちらはどうでしょうか?
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…1.82、1.74、1.74、1.75、1.71
・ビラノア群…1.82、1.70、1.71、1.71、1.64
・フェキソフェナジン群…1.82、1.72、1.70、1.68、1.66

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.08、-0.08、-0.07、-0.11
・ビラノア群…-0.12、-0.11、-0.11、-0.18
・フェキソフェナジン群…-0.11、-0.13、-0.14、-0.17

時間が経つにつれ、ほんの気持ちだけプラセボよりビラノアやアレグラの方が効いているような。
ただ、各時点ともプラセボと統計学的な差はありません(ビラノア、アレグラ共に)

こちらの4点満点は以下のように決められています。
4点…1日中完全につまっている
3点…鼻閉が非常に強く、口呼吸が1日のうちかなりの時間あり
2点…鼻閉が強く、口呼吸が1日のうち、ときどきあり
1点…口呼吸は全くないが、鼻閉あり
0点…1点の症状未満

④鼻内そう痒感(3点満点)
かゆみの症状のことです。こちらはどうでしょうか?
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…1.77、1.70、1.67、1.65、1.58
・ビラノア群…1.84、1.55、1.58、1.60、1.55
・フェキソフェナジン群…1.81、1.60、1.56、1.53、1.54

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.07、-0.10、-0.12、-0.18
・ビラノア群…-0.29、-0.26、-0.24、-0.29
・フェキソフェナジン群…-0.22、-0.25、-0.28、-0.28

ビラノアやアレグラ共に早期から効いている感じです。
ビラノアが1~3日で一番変化量下がっていますが(-0.29)、ベースライン値も3群の中で一番大きい(1.84)ですので、その影響もあるかもしれません。

こちらの3点満点は以下のように決められています。
3点…鼻がむずむずし、たびたび鼻をこすったり、鼻をかむ
2点…鼻がむずむずし、たびたび鼻をこすったり、鼻をかみたくなる
1点…鼻がむずむずするが、あまり気にならない
0点…なし

鼻症状をまとめてみると、まず鼻閉にはビラノアもアレグラもあまり効かない感じですね。
残り3つの症状にはビラノアもアレグラも効いている感じではあります。
そしてこの3症状とも、1~3日の早期でビラノアの変化量が一番低くなっていますが、特にアレグラと差がでているのは鼻汁ですかね(鼻汁ではビラノアとフェキソフェナジンで有意差もついています)。

各症状ほんの少しずつ効果があり、それらを全て足してTNSSとすると、各群での差が少し明確になっているというところでしょうか?
まあ、そうしないと明確にならないくらい、効果が弱い薬ではあると考えられます。

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<目症状について>
ここまで鼻症状の話をしてきましたが、目の症状についても検討しているので、その結果をみてみます。
目症状の合計スコアはTOSS(8点満点)としています。
分割すると、①目のかゆみ(4点満点)、②流涙(4点満点)です。
先に定義をみてみますと、
①目のかゆみ
4点…3点よりひどい
3点…たびたび目をこする
2点…ときに目をこする
1点…目をこするほどではない
0点…なし

②流涙
4点…3点よりひどい
3点…たびたび涙をふく
2点…ときに涙をふく
1点…涙をふくほどではない
0点…なし
となっています。

先に個別の結果からみてみましょう・
①目のかゆみ
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…1.25、1.18、1.18、1.18、1.12
・ビラノア群…1.22、1.03、1.04、1.05、1.00
・フェキソフェナジン群…1.26、1.02、0.99、0.97、0.93

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.06、-0.07、-0.07、-0.13
・ビラノア群…-0.19、-0.18、-0.17、-0.22
・フェキソフェナジン群…-0.24、-0.27、-0.29、-0.33

ビラノアもフェキソフェナジンもプラセボより効いている感じです。
ただ、ビラノアよりもフェキソフェナジンの方が効果が若干強いような。
1週間後では、ビラノアとフェキソフェナジンで統計学的にも差がでており、ビラノアが負けています。

②流涙
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…0.84、0.77、0.78、0.78、0.76
・ビラノア群…0.77、0.64、0.66、0.68、0.69
・フェキソフェナジン群…0.82、0.66、0.66、0.66、0.65
4点満点ですが、ベースラインの値が低いですね。
はじめから症状がほとんどないに等しいともとれます。

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.07、-0.06、-0.06、-0.08
・ビラノア群…-0.13、-0.11、-0.09、-0.08
・フェキソフェナジン群…-0.17、-0.16、-0.16、-0.18
ビラノアでは投与直後は少し効いているようですが、その後プラセボとほとんど同様ですね。
フェキソフェナジンは1~3日から2週後までより効いている感じです。
2週間後では、ビラノアとフェキソフェナジンで統計学的にも差がでており、ビラノアが負けています。

①目のかゆみと②流涙を合計した目症状合計スコア(TOSS)でみると以下のようになっています。
数値は左からベースライン、1~3日、1~7日、1週間後、2週間後としました(平均値)
・プラセボ群…2.09、1.96、1.96、1.96、1.88
・ビラノア群…1.99、1.67、1.70、1.73、1.69
・フェキソフェナジン群…2.08、1.68、1.65、1.63、1.58

変化量でみると(左から1~3日、1~7日、1週間後、2週間後)(平均値)
・プラセボ群…-0.13、-0.13、-0.13、-0.21
・ビラノア群…-0.32、-0.29、-0.26、-0.30
・フェキソフェナジン群…-0.40、-0.43、-0.45、-0.51

どうでしょうか?
ビラノアもフェキソフェナジンもプラセボよりは効果が出ている感じですが、ビラノアはフェキソフェナジンに負けている感じです。
統計学的な差についてみてみると、1~3日、1~7日ではビラノアとフェキソフェナジンで統計学的な差は認められていませんが、1週間後と2週間後では統計学的な差が認められ、ビラノアが負けています。

主要評価としては鼻症状をみているので、その結果に目が向きがちですが、他の項目もよくみてみると、案外落とし穴があったりするものです。
鼻症状がつらい方はビラノア、目の症状もつらい方はアレグラを使うなど、考慮してもよいかもしれませんね。

<
薬物動態(血中濃度)>
最後にビラノアの薬物動態(血中濃度)について簡単にみていきます。

ビラノアは1日1回の投与で治療ができるのが売りですが、血中に溜まるタイプの薬でしょうか?(血中に溜まるタイプだと、飲み忘れに注意が必要となります)
添付文書の2頁目左上をみてください。
グラフをみると、24時間後の血中濃度はほぼ0まで下がっています。
本文の最後にも「反復投与による蓄積はなかった」とありますので、反復投与により至適血中濃度に到達させる必要もありませんので、飲み忘れても大して影響ないと考えられます。

飲み忘れについてはこちらを復習ください↓
飲み忘れは努力を水の泡にする!-①(理解編)[★]
飲み忘れは努力を水の泡にする!-②(実践編)[★~★★]

ビラノアで薬物動態上気を付けなければならないことが1点あります。
それは、食事に影響されるということです。
添付文書2頁目右の真ん中あたりの「食事の影響」以下記載があります。
「健康成人男性20例にクロスオーバー法で空腹時及び食後(高脂肪食)に本剤20mgを単回経口投与したとき空腹時に比べ食後投与時のCmax及びAUC0-tはそれぞれ約60%及び約40%低下した。」
食事と一緒に服用すると血中濃度が下がる、つまり効果が落ちる可能性があるということです。
よって、飲み方(用法・用量)は以下のように定められています。(添付文書1頁目の左)
【用法・用量】
通常、成人にはビラスチンとして1回20mg を1日1回空腹時に経口投与する。

食事と一緒に飲めないというのは、結構面倒ではありますね。
1日1回で治療できるのはうれしいですが、これは大きな欠点です。

一方でアレグラではどうなのでしょうか?
添付文書をみてみると、まず反復投与における蓄積がないというのはビラノアと同様です。
(アレグラは1日2回なので、服用12時間後に血中濃度がほぼ0までさがっています)

食事の影響について、【用法・用量】には特に定められていないので、おそらく薬を処方される際にはいつ飲んでもよいように言われる可能性が高いです。
ただ、薬物動態の食事の影響の項には以下のような記載があります。
「空腹時に比べ食後投与時のAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ15%及び14%減少した。」
食事により血中濃度が下がるということです。よって、効果も下がる可能性があります。
ただ、ビラノアのような大きな変化ではなく、血中濃度が1~2割程度落ちる程度です。
(ビラノアでは40~60%の低下とありました)
よって、少し効果が下がってもよいという方であれば、食事と一緒に飲んでしまっても…。
(私の場合は面倒なので、一緒に飲んでしまうかも)

ということで、今回は長くなりましたが、全体のまとめを前回から更新して、以下のようにしました。

<使用の面>
・ビラノアは1日1回の服用で治療が行える(アレグラは1日2回)
・ビラノアは食事の影響を大きく受けるため、食事と一緒に服用できない
・アレグラも食事の影響を受けるが、血中濃度が1~2割下がる程度なので、それを覚悟で食事と一緒に飲んでしまうという手もある(おすすめはしません)

<効果の面>
・ビラノアやアレグラはプラセボよりも効果に優れていると考えられる(鼻、目ともに)
・鼻症状に対し、ビラノアはアレグラよりも即効性に優れていると考えられる
これについて、症状が出る前から飲み始めていればアレグラもビラノアもあまり変わらないと考えられる
・目症状については、ビラノアよりアレグラの方が優れていると考えられる
・ビラノアは1日1日の服用で24時間効果が持続すると考えられる

<費用の面>
・アレグラのジェネリック(フェキソフェナジン塩酸塩)が最も安い

薬の値段については、「薬価サーチ」などのサイトで確認できますので、気になる方は調べてみては?

もう1点最後の最後に補足なのですが、今回のデータはどこから持ってきたの?と気になる方もいるかと思います。今回は「CTD」という資料をダウンロードして調べてみました。
「CTD」について、以下にダウンロードの仕方を追加しましたので、調べてみたい方はダウンロードしてみてください。

「用語解説」

ビラノアのCTDの「9. 臨床概要」の「2.7.6.24 10055030 試験(第5.3.5.1.2 項)」に記載があります。2.7.6の頁下の番号で「302頁~410頁」となります。

花粉症の時期もほぼ終わってしまいましたが、また来年参考にしてください。
それではまた。

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