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花粉症の薬のおはなし② [★]

投稿日:2018年4月8日 更新日:

今回は前回に引き続き、ビラノアの効果について臨床試験の結果をみていきます。
前回は2週間薬を飲んだときの鼻症状合計スコア(TNSS)の結果をみました。
スコアについてよく考えることが重要という話をしましたが、TNSSは15点満点のスコアで、ベースライン(薬を飲む前)のスコアが大体7点台の患者さんが試験対象となっていました。
そして、ビラノアとアレグラでは2週間後に約1点程度スコアが下がっており(改善されており)、プラセボでは約0.6点程度下がっていました。

この結果のみで考えると、ビラノアもアレグラも変わらないじゃないか!ビラノア飲むメリットあるの?プラセボともあんまり変わらないってどういうこと?
となるので、色んな結果をみていくことにします。

花粉症の症状って早くなくしたいですよね! 上記は2週間後の結果ですが、きつい症状が出てから2週間ってすごく長いですよね。知りたいのは飲んだらすぐに効果が得られるかです。
ということで、飲んだ直後からの結果をみていきます。

インタビューフォームには添付文書よりも詳しいデータが掲載されているので、添付文書と同じ試験の掲載箇所を探していきます。

インタビューフォームのⅤ章が臨床成績の箇所です。そして以前にも述べましたが、「3臨床成績(2)臨床効果」には添付文書と全く同じ情報が掲載されます。
各試験の詳細はその後の「3臨床成績(3)(4)(5)」のいずれかで紹介されますが、メインの試験は「(5)検証的試験」に掲載されていることが多いです。
今回の試験はプラセボとの比較試験ですので、(5)の中の比較試験を探しましょう。
そうすると、2)が比較試験となっており、そのはじめが「通年性アレルギー性鼻炎患者」の試験となっています。(頁下の頁番号で17頁~)

患者群と例数を確認すると、有効性解析対象集団で「本剤群249例、プラセボ群251例、フェキソフェナジン塩酸塩群247例」と記載されており、添付文書の結果の表内の症例数と同じですので、こちらが添付文書と同じ試験で間違いありません。

18頁の下にTNSSの変化量の推移のグラフがあるので、こちらを見ていきます。
↓こんな感じのグラフ

いかがでしょうか?
ビラノアは1日目に一気に―1まで下がっています。一方、アレグラ(フェキソフェナジン)ではビラノアと同じくらいまで下がるのに3日くらいかかっていますね。
ビラノアはアレグラよりも即効性に優れていると言えるかと思います。

そして、ビラノアは下がったスコアを13日まで持続的に維持できています。
アレグラでも3日後は同様に維持できているのですが、決定的な違いがあります。
それは、ビラノアは1日1回で服用でよいのに対し、アレグラでは1日2回服用する必要があるということです。
ビラノアは1日1回の服用で即効性を示し、持続性も保つことができる薬と言えるでしょう。

持続性の結果がもう少しインタビューフォーム掲載されているので解説します。
1日1回の服用というと、飲んだ直後の効果が24時間後、次に飲む直前までほんとに持続するの?と思う方もいるかと思います。
それについて、インタビューフォーム19頁にグラフがあります。
先ほどのグラフと解析方法が異なるようで、こちらは実際の値ではなく、推定された値で出しているので結果が先ほどのグラフと若干異なるのですが、ビラノア(本剤)では投与1時間後(左のグラフ)と2回目の投与前(ビラノア)で変化したスコアの変化量はほとんど変わっていません。
よって、この結果を見る限りでは、薬を飲んでから次に飲む24時間後まで効果が持続すると考えられます。
(アレグラの結果の方がこのグラフでは若干スコアが低くなっていますが、アレグラの右のグラフは1日2回目投与の2回目投与前の結果と思われます)

アレグラをあまり落とすといけないので補足ですが、よく花粉症の薬は症状がでる前、早い段階から飲むのが良いといわれているかと思います。
上の推移のグラフをみると効果が現れるまで結構かかりますね。アレグラのスコアはベースラインから7日まで下がり続けているので、最大の効果を得るのに服用してから約1週間くらいかかることが分かります。
逆に考えると、症状が出る前から飲んでしまえばビラノアと効果はあまり変わらないと考えられます。
アレグラはジェネリック医薬品も出ているので、費用を安く済ませたい場合はアレグラを選ぶという選択肢もあります。

さて結果の続きです。
前回説明した2週間後の結果ではプラセボとビラノア、プラセボとアレグラ、大した差がありませんでした。
上の推移のグラフをみるとどうでしょうか?プラセボでも徐々にスコアが下がっていっていますが、特に1~5日くらいだと圧倒的にビラノアやアレグラの方が効果が勝っているのが分かりますね。

今回の結果で大体見えてきたでしょうか?
まとめますと、ベースラインから13日までのスコアの推移をみると、
・ビラノアやアレグラはプラセボよりも効果に優れていると考えられる
・ビラノアはアレグラよりも即効性に優れていると考えられる
・ビラノアは1日1日の服用で効果が持続すると考えられる
(アレグラは1日2回の服用)
・ただし、症状が出る前から飲み始めていればアレグラもビラノアもあまり変わらないと考えられ、費用を考えるとアレグラ(ジェネリックのフェキソフェナジン塩酸塩)を選ぶという選択肢もある
ということになります。

ただ、上記は鼻症状の合計スコアをみた考察にすぎません。
また、15点満点のスコアのうち1点しか下がっていないというのも事実です。

ということで次回はもう少し症状の細かな結果をみていくことにします。インタビューフォームには掲載されていないので、さらに大元のデータをみていくことにします。
花粉症シーズンがほんとに終わってしまうので、早いうちに書けるよう努力してみます。

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