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花粉症の薬のおはなし① [★]

投稿日:2018年4月1日 更新日:

花粉症シーズンも終わりに近づいてしまいました…
もっと早く記事書いていれば皆様のお役に立てたかもしれませんが、また来年のために、ということで少し書いてみます。

私は「アレグラ」(一般名はフェキソフェナジン塩酸塩)を今年も使っていたのですが(家に結構保管してあったので)、周りでは「ビラノア」という新しい花粉症のお薬を使っている方を結構見かけました。
ビラノアは2016年11月に発売された薬です。花粉症シーズンとしては2017年が初となるので、今年は2年目になりますね。
これまでのお薬とどの程度異なるのか、興味がある方もおられるかと思います。
ビラノアの効果をアレグラと比較した臨床試験の結果が出ておりますので、今回紹介していきます。

とりあえず添付文書とインタビューフォームをダウンロードしましょう。
ダウンロードの仕方はこちら↓
添付文書
インタビューフォーム

まずは添付文書から。
2頁目右下の【臨床成績】のはじめに掲載されている
(1) アレルギー性鼻炎
に結果の一部が記載されています。
ビラノアが「本剤」で、フェキソフェナジン塩酸塩はアレグラ、それとプラセボの3群で比較検討しています。

「花粉症」は別名「季節性アレルギー」というのですが、今回の試験では年中通して症状のある「通年性アレルギー」の患者を対象にしています。なお、インタビューフォームには季節性アレルギー患者を対象とした試験結果もいくつか掲載されているので、参考にしてみるとよいでしょう。

また、この試験では「鼻症状」のある患者を対象としており、主な評価として鼻症状をみています。(目症状についてもデータは出していますので、次回紹介します)

添付文書の結果の記載は、
『主要評価項目である「総合鼻症状スコア(鼻汁、くしゃみ発作、鼻閉、鼻内そう痒感)の期間平均変化量」は、本剤20mg 1日1回投与によりプラセボに対して有意な減少を示した。』
のみで、後は表が載っているだけですので、かなり大雑把ですね(笑)
鼻の症状がプラセボよりも改善したことは分かりますが、そんなのあたり前ですよね(笑)

表に数値がありますので、少し解説してみます。
変化量(はじめからどれくらい変化したか)が記載されている場合はベースライン(はじめの値)の値をよく見る必要があります。
というのは、ベースラインのスコア100に対して変化した値が5というと大したことないですが、ベースラインのスコア10に対して変化した値が5ということであれば、かなりの変化です。
その辺を隠して変化量しか掲載されていない結果も多々みられるので要注意です!

今回のベースラインの値はは以下のようになっています。
本剤20mg群(ビラノア)…7.48
フェキソフェナジン群(アレグラ)…7.38
プラセボ群…7.33
大体7程度です。

ここで何が7なのだろう?と思った方は素晴らしい。
爪白癬の記事のときにも述べたのですが、スコアがどのようなものかを考えることが大切です。
添付文書にもインタビューフォームにも今回記載がないので、大元の論文をみてみましたところ、以下のような15点満点のスコアでTNSSと呼ばれています。

TNSS(鼻症状の各症状スコアの合計)…0~15点
①鼻汁…0~4点
②くしゃみ発作…0~4点
③鼻閉…0~4点
④鼻内そう痒感…0~3点

今回対象とされた患者さんはTNSS 15点のうち、7点くらいの患者さんということになります。

では、薬の効果をみてみます。
添付文書の表では2週間投与したとき、以下の変化があったと記載されています。
本剤20mg群(ビラノア)…-1.00
フェキソフェナジン群(アレグラ)…-0.96
プラセボ群…-0.60

2週間薬を飲んだとき、ビラノアとアレグラではスコアがどちらも1程度下がっています。
合計スコア15点に対し1程度。これをどう捉えるか!?

一方、プラセボでも0.6程度は下がっています。
とすると、実際の薬とプラセボの差は0.3~4程度ですね。
合計スコア15点に対し、0.3~0.4程度の差。これをどう捉えるか!?

ただ、ビラノアとプラセボで統計学的に差があることは記載されています。
表の「プラセボとの差」に記載されている「P値:0.023」です。
P値が0.05を下回れば統計学的に差があると言えます。

そしてフェキソフェナジン(アレグラ)との差については文言では何も書かれておらず、上記変化量では同様の効果ととれてしまいます。

とすると、このビラノアは何がメリットなのだろう?ということになるので、この続きは次回紹介します。
(中途半端ですみません。今回は「スコア」というものをよく考える、という回とさせていただきます)

※個人的な考えでは、ビラノアにはいくつかのメリットがあります。
この添付文書では2週間後の結果しか載っていないので…

できるだけ早いうちに書きますので。

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