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試験管レベルの実験で薬になりそうなものを見つける-② [★~★★]

投稿日:2018年1月7日 更新日:

明けましておめでとうございます。
今年もとうとうお仕事始まりましたね。
先週は準備体操のようなものだったかと思いますが、3連休終わると一気に通常稼働となり、楽しかった正月も影をひそめて寂しい限りですね… (財布の中も…)
そんなところで1本書きましたので、アップいたします。

前回、DNA分解酵素(DNase)を例にとって、試験管レベルでの実験の話をしました。
ただ、このDNaseは病気と関連するタンパク質じゃないので、ちょっと実感沸きにくいのでは?
ということで、今回は病気と関連するもので話をしたいと思います。

ポリメラーゼの話をずって進めてきたので、次回はその話をしますが、その前に今回はヘリカーゼの話をします。
以前ポリメラーゼの話の中で出てきたのですが、覚えていらっしゃる方もおりますでしょうか?
ウイルスのDNAまたはRNAがポリメラーゼによって増殖されるには、その前に二本鎖のDNAまたはRNAが1本鎖にはがされる必要があります。
この2本鎖を1本鎖にはがす役目をするタンパク質がヘリカーゼです。

↓前に掲載した図です
①DNAの場合(図のはじめの部分がヘリカーゼ)

②RNAの場合(図の終わりの部分がヘリカーゼ)

このヘリカーゼはウイルスに対する薬の標的と考えれられていまして、私が学生時代に、C型肝炎ウイルスのRNAヘリカーゼの働きを抑制する物質を探していました。
それでは、どのように実験するかを説明していきます。

<材料の準備>
・1本鎖の短いRNAは試薬会社に注文して作ってもらいます(もちろん多少お金はかかります(笑))
(オリゴと呼んでいます。DNAの方がよく使われますが、RNAも注文できます。)
・それと結合して2本鎖を形成するもう1本のRNAも注文して作ってもらいます

・ヘリカーゼ(タンパク質)は頑張って自分で作っていましたが、大変なのでここでの説明は省略します。
簡単に言うと、タンパク質は遺伝子があれば作ることができます。
(大腸菌で作ったり、バキュロウイルスというウイルスに目的の遺伝子を組み込んで昆虫の細胞に感染させると目的のタンパク質を作ってくれたりしますが、この話はまた別の機会に)

・放射能の部品([γ-32P]-ATP)…RNAの端につけることができます
⇒今回、この放射能が目印となり、可視化されます。

材料がそろったら、いよいよ実験です。
1. 2つの1本鎖RNAのうち、短い方のRNAの末端に放射能の部品をつけます。
2. 2つの1本鎖RNAを結合させ、2本鎖のRNAを作ります。
3. 2本鎖のRNAにヘリカーゼが働くと、はがされて1本の鎖となります。
RNAが2本のままなのか、1本になったのかを検出します。

前回のように電気泳動でRNAを検出しますが、今回は目印である放射能を目で見える形にしました。
実際に行った実験の写真をお見せします。

上側に見られるバンドが2本鎖のRNA(上記イラストのB)で、下側に見られるバンドが1本鎖のRNA(上記イラストのA)です。
C1~C4は基準(コントロール)として設けました。(CはControlの頭文字)

この写真の説明をします。
まず基準(コントロール)の説明からです。
C1は1本鎖のRNAをそのままサンプルとして検出したものです。(2本鎖にする前の短い方のRNAのみを検出したもの)
C2は2本鎖にして検出したものです。2本になって大きくなったので、1本鎖に比べて上に移動しました。
そして一番右のC4ですが、一旦2本鎖にしたものを95℃でボイルしたものです。
高温(95℃)にすると、2本鎖のRNAが離れて1本鎖となるので、2本鎖から1本鎖になった場合にどう見えるかを確認しました。
そしてC3は何かというと、①~⑥のサンプルはヘリカーゼを混ぜて37℃で数十分間温めているのですが(37℃はタンパク質が働きやすい温度)、C3はヘリカーゼを入れずに温めたものです。
ヘリカーゼがなければRNAが1本鎖に解離しないことを確認しています。

それでは、ヘリカーゼが2本鎖のRNAに作用したサンプル①~⑥の説明です。
①はヘリカーゼが反応して、1本鎖のRNAができています。(2本鎖も少し余ってますね)
この①を基準として、ヘリカーゼの機能を抑制する物質の評価をしました。
②⇒⑥の順にヘリカーゼの機能を抑制する物質の量を増やしています。
②⇒⑥にいくにつれて、1本鎖(A)のRNAの量が少なくなり、2本鎖(B)のRNA量が多くなっていますね。⑤⑥ではヘリカーゼの機能がほぼ完全に抑制されています。

このように、ヘリカーゼの機能を抑制するかどうかを実験で検討することができます。

いかがでしたでしょうか?今回は放射能を目印に可視化しました。

次回はポリメラーゼの話をしますが、放射能を用いて可視化ではなく、放射能量を数値として測定することで評価する、という話をしていきます。
それでは。

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