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インフルエンザの薬の効果① [★]

投稿日:2017年11月4日 更新日:

久しぶりに薬の効果の話をします。
寒くなってきましたので、そろそろ流行りだすインフルエンザの薬について紹介します。
今年(2017年)は早くも9月から学級閉鎖が相次いでいるなどと発表されているので、興味深いのではないでしょうか?

私も昨年の3月にインフルにかかりましたが、「48時間以内に薬を服用しないと効かない」などと噂が立っていることから、慌てて病院に行き、検査をしてもらって薬を処方してもらいました。
確かに薬を服用すると楽になった気がしたのですが、インフルの薬ってどのくらい効くのでしょうか?そもそも「48時間以内」には根拠はあるのでしょうか?
その辺、添付文書とインタビューフォームで確かめてみました。

久々なので、添付文書やインタビューフォームのダウンロードの仕方はこちら↓
●添付文書
●インタビューフォーム

それでは、事件にもなって有名な「タミフル」から紹介していきます。

<タミフル>
まずは最も基本となる添付文書をみていきますのでダウンロードしてください。
4頁左下にある【臨床成績】の1の<日本人における成績>をみてください。
4頁右上に「インフルエンザ罹病期間(時間)」という表があります。
罹病期間というのは病気にかかっている期間です。
表中の「オセルタミビルリン酸塩」というのがタミフルの一般名です。

インフルエンザ罹病期間は以下のように記載されています。
・オセルタミビルリン酸塩(タミフル)…70.0時間 ⇒ 2.9
・プラセボ…93.3時間3.9

これを見てどう思われるかはあなた次第です(笑)
タミフル服用では、プラセボ(偽物の薬)に比べて約1日早く治りがよくなっていますね。

ただ、プラセボ効果とは?[★]
の記事でも説明したように、何も飲まない場合よりもプラセボを飲んでいた方がよくなっている可能性もあります。(どのくらい良くなったかは分かりません)

次に具体的な症状がどの程度軽くなるのか、という点についてみてみましょう。
添付文書にはないので、インタビューフォームをみてみます。
上記と同じ試験についてみていきたいので、上記70.0時間と93.3時間の結果を探してみましょう。

P23からはじまる「(5)検証的試験」の中、「2)比較試験」(P24~)のデータです。
P25の結果(1)の表の罹病期間に同じ数値がありますね。

~補足~
臨床試験には第Ⅰ相~第Ⅲ相試験まであり、一番大きな試験とされているのが第Ⅲ相の試験です。その中で、検証的試験というのが大きい試験ですので、その結果をみるとよいです。添付文書に記載の結果も第Ⅲ相試験の検証的試験の結果が主に記載されています
~補足 ここまで~

それでは、症状についてみていきましょう。
分かりやすいのは「体温」ですね。体温回復の結果は以下のようになっています。

「体温」の回復までの時間
・タミフル…33.1時間 ⇒ 1.4
・プラセボ…60.5時間 ⇒ 2.5

他の項目は分かり難いので、その下の表をみてみましょう。(2)の表です。
各インフルエンザ症状の回復までの時間について記載があります。

「筋肉/関節痛」の回復までの時間
・タミフル…14.7時間 ⇒ 0.6
・プラセボ…25.5時間 ⇒ 1.1

「けん怠感/疲労感」の回復までの時間
・タミフル…23.5時間 ⇒ 1
・プラセボ…30.5時間 ⇒ 1.3

「頭痛」の回復までの時間
・タミフル…21.6時間 ⇒ 0.9
・プラセボ…26.8時間 ⇒ 1.1

「悪寒/発汗」の回復までの時間
・タミフル…11.1時間 ⇒ 0.5日
・プラセボ…24.4時間 ⇒ 1

「鼻症状」の回復までの時間
・タミフル…40.7時間 ⇒ 1.7
・プラセボ…56.0時間 ⇒ 2.3

「喉の痛み」の回復までの時間
・タミフル…20.4時間 ⇒ 0.9
・プラセボ…29.5時間 ⇒ 1.2

「咳」の回復までの時間
・タミフル…50.0時間 ⇒ 2.1
・プラセボ…63.5時間 ⇒ 2.6

気になる症状について、チェックしてみてくださいね。
これがインフルエンザの治療薬の効果ということになります。
(あくまでも1つの臨床試験の結果ですが)
これまでの印象と比べていかがでしょうか?

私はどうか? 飲みたいか?と聞かれたら、”飲みたいです”(笑)
それはなぜか? 1日でも早く治したいからです。
つらい症状は数時間でも早く治るのであれば治したいです。

ただし、薬の服用は「薬によるベネフィットが副作用などのリスクを上回る場合に!」
ですので、常に副作用のことは気にかけてくださいね。

少し補足ですが、試験対象の説明をしていませんでした。
インタビューフォームP24の対象のところに、「16歳以上」とありますので、小さい子供は含まれていません。
子供に対する効果について知りたい方は、海外の試験ですが、P25下~の「小児における…」の試験結果をみてください。(シロップの試験です)
1~12歳の患者が対象となっています。
P26上表の「症状発現期間」が結果として分かりやすいでしょうか?
タミフル服用で63.4時間(2.6日)、プラセボ服用で99.6時間(4.2日)ですので、約1.5日の差ですね。
まあ、インフルエンザの薬とプラセボの差ってこんな程度かと思います。

なお、添付文書やインタビューフォームに「予防試験成績」というのが記載されており、おっ!予防にも使えるのか!と思われる方もいるかと思いますが、使える方は限定されています。
まず、同居者にインフルエンザにかかっている方がいる、というのが前提です。
さらに、以下のいずれかにあてはまる方しか予防としては使えません。(原則として)
・65歳以上の方
・慢性呼吸器疾患の方
・慢性心疾患の方
・糖尿病などの代謝性疾患の方
・腎機能障害の方
⇒こちらは添付文書はじめの頁の右の<効能・効果に関連する使用上の注意>の2に記載されています。

いかがでしたでしょうか?
疾患の話になると、図のない文字だらけ記事になってしまいます…
「48時間以内に服用」の件については次回紹介したいと思います。

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