★疾患と薬/薬の開発

DNA⇒RNA⇒タンパク質(用語解説) [★~★★]

投稿日:2017年10月15日 更新日:

前回から薬の探索(開発)シリーズをスタートしましたが、「RNA」という用語が今後出てきますので、用語について先に解説しておきます。
(前回、タンパク質を標的とした薬の話に少し入っていくと言っていましたが、後になります)

DNAとタンパク質については前回触れましたが、DNAの遺伝情報に基づいて、ヒトでは約10万種類のタンパク質ができます。
まずこの仕組みについて説明しますと、DNAは「A」「T」「G」「C」という4つの文字列からできています。

(DNAの表記例)ATG ACA TCC TCC TGC TGT GTC…

DNAは下の図ように2本の鎖から成っていますが、「A」「T」「G」「C」の4つの部品が連なってできています。下のイラストの片方の鎖に着目すると、(DNAの表記例)の文字列の順に「A⇒T⇒G⇒A⇒C⇒A⇒T⇒C…」と並んでいます。

それでは「A」「T」「G」「C」の文字列は何を表しているのでしょうか?
タンパク質は20種類のアミノ酸が連結してできていますが、DNAの「A」「T」「G」「C」の配列に基いてどのアミノ酸が連結するかが決まります。
(DNAの表記例)で示したDNAの文字列 3文字分がアミノ酸1つに対応します。

(DNAの表記例)ATG ACA TCC TCC TGC TGT GTC…

例えば「ATG」は「メチオニン(M)」というアミノ酸に対応しています。
次の「ACA」は「トレオニン(T)」、その次の「TCC」×2は「セリン(S)」×2、
「TGC」は「システイン(C)」、その次の「TGT」も「システイン(C)」、最後の「GTC」は「バリン(V)」に対応しています。

よって、アミノ酸を上記()内のアルファベットで並べると、

M-T-S-S-C-C-V…

となります。
(アミノ酸が左から右につながっていると考えます)

<DNAとタンパク質の対応>
DNA…ATG ACA TCC TCC TGC TGT GTC

アミノ酸…M-T-S-S-C-C-V

DNA 3文字が20種類のどのアミノ酸に対応しているかについては「コドン表」という表をみると分かります。(知りたい方は「コドン表」で検索してみてください)
また、アミノ酸20種類の詳細についても、WEBで検索すればすぐに分かりますので、検索してみてください。

DNAとタンパク質の関係については分かりましたでしょうか?
次にRNAというものについて説明します。

DNAの情報を基にタンパク質ができるという説明をしましたが、
DNAからタンパク質が直接できるのではなく、RNAという遺伝子が仲介して、
DNA⇒RNA⇒タンパク質
の流れでタンパク質ができます。

DNAとRNAは似たようなもので、RNAもDNAと同じ文字列で表されます。
DNAでは「A」「T」「G」「C」の4文字でしたが、
RNAでは「T」が「U」となり、「A」「U」「G」「C」の4文字で表されます。
(基本、DNAのTがUになっただけ)

というとほとんど変わらないじゃないか!
と思われるのですが、なぜRNAというものが存在するのでしょうか?

実は、ヒトの全ての細胞は同じDNAを持っています。
頭の細胞のDNAも、手の細胞のDNAも、腎臓の細胞のDNAも全て同じなのです。

しかし、頭には髪の毛があり(髪の毛はタンパク質からできています)、
一方で手には髪の毛はありません。
同じDNAを持つ細胞なのに、各部位で作られるタンパク質は異なっているのです。

この違いを産み出しているのが「RNA」という仕組みです。
各部位で必要なタンパク質のRNAがDNAを基に作られる仕組みになっています。

例えば手には髪の毛が必要ないので、手の細胞では髪の毛のタンパク質に対応するRNAが作られません。RNAがなければタンパク質は作られません。

一方で、頭では髪の毛が必要なので、頭の細胞は髪の毛のタンパク質を産み出す必要があります。よって、頭の細胞ではDNAから髪の毛のタンパク質に対応するRNAが作られ、そのRNAの情報に基づいてタンパク質が作られます。

↑ DNAは二本鎖ですが、RNAは一方鎖です。

このように、各部位で必要なタンパク質に対応するRNAがDNAを基に作られます。
そしてRNAができると、そのRNAの情報に基づいたタンパク質が作られるのです。
一方で、RNAができなければタンパク質は作られません。

まとめますと、DNAは全てのタンパク質に対応する情報をもっており、どの部位の細胞であっても同じDNAを持っています。そして、必要となるタンパク質のRNAのみが各部位の細胞で作られ、そのRNAに基づいてタンパク質が作られます。
要するに、あるタンパク質が作られるかどうかは、対応するRNAができたかどうかによります。
⇒RNAがあるかどうかが重要なのです。

尚、各細胞でRNAやタンパク質ができることを「発現する」と言います。
頭の細胞では髪の毛のRNAやタンパク質が「発現しています」が、手の細胞では「発現していません」のように使います。

また、DNA⇒RNAの流れを「転写」、RNA⇒タンパク質の流れを「翻訳」と呼んでおり、
DNA⇒RNA⇒タンパク質 の流れを「セントラルドグマ」と呼んでいます。

少し難しいかと思いますが、お分かりになりましたでしょうか?
RNAは疾患を理解するためにも非常に重要ですので、理解していただければ嬉しいです。

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