★血中濃度

飲み忘れは努力を水の泡にする!-②(実践編)[★~★★]

投稿日:2017年10月1日 更新日:

バタバタしており少し間が空いてしまいましたが、引き続き飲み忘れの話をします。
少し難しいので、[★~★★]の記事としておきます。

前回、1日1回飲む薬を想定し、1日後に薬が血中に残らないタイプの薬と、残るタイプの薬を例にとり、説明しました。
1日後に、というのは次に飲む時までにという意味です。
(1日1回飲む薬をとりあげたので、1日後ということです。1日2回飲む薬だと、大体12時間間隔で2回飲むと思いますので、12時間後にということです。)

↓前回の図です。

それで、次に飲むときまでに血中に残るタイプと残らないタイプをどう見分けたらよいのか?というのが今回の話です。

<方法1> 血中濃度のグラフをみる(単回投与のグラフ…1回のみ服用)
最も簡単なのは、上図のような血中濃度のグラフをみて、何時間残っているのかをみることです。
ただ、添付文書やインタビューフォームにグラフが掲載されていないこともありますし、血中濃度が0になる前までしか記載していないこともあり、正確性にも欠けるかと思います。

<方法2> 「反復投与」という記述を探す
薬が残るかどうかをきちんと確かめているのが、「反復投与」の試験です。
言葉の通り、薬を繰り返し服用し、薬がどの程度溜まっていくかをみている試験です。
薬が血中に溜まることを「蓄積」と言います。
実際の添付文書をみてみましょう。
これまでに説明に使用した薬を例に挙げていきます。

(例1)ラジレス添付文書
3頁目【薬物動態】の1. 血中濃度の(2)に記載があります。
「1日1回7日間反復経口投与したとき、投与5~7日後に定常状態に達し、単回投与と比べ約2倍の蓄積が認められた」
⇒「定常状態」は前回説明したので大丈夫ですね?
1回投与に比べて定常状態(5~7日)において血中濃度が2倍増加しているという意味です。
ということで、こちらは薬が血中に溜まるタイプの薬です。

↓これも前回の図です。イメージに。

(例2)ビムパット添付文書
3頁目の【薬物動態】の1. 血中濃度の(2)に記載があります。
タイトルに「反復投与」と記載があるので分かりやすいですね。
ただ、内容が専門用語だらけで分かり難いです。
「1日2回7日間反復経口投与したとき、血漿中ラコサミド濃度は投与開始から3日後に定常状態に到達した。AUC0-12hの蓄積係数は2.4であった」
⇒「3日後に定常状態」の記載は大丈夫ですね。
1回投与に比べてどれくらい増えるかが「蓄積係数」です。
蓄積係数が2.4とは、1回投与に比べて定常状態では2.4倍になっているという意味です。
この薬も血中に溜まるタイプの薬です。

溜まらないタイプについても説明したいのですが、これまでに出てきた薬だと見当たらないので、花粉症の薬「アレグラ」の添付文書をダウンロードしてください。

(例3)アレグラ添付文書
2頁右下【薬物動態】の1. 血中濃度の(1)の最後の文書、「反復投与時には蓄積傾向はみられなかった。」とあります。
よって、アレグラは溜まらないタイプの薬です。
ただし、添付文書と同じ飲み方をしていればです。
1日2回飲む薬なのに、1日3回飲んでしまったら、話は変わります)

<方法3> 一般の方には難しい内容ですので飛ばしてください。
反復投与のデータがない場合、理論的にどれくらい溜まるのかを計算することができます。
ただ、実際と異なる場合があるので、参考にということになります。

<方法2>の(例2)ででてきた「蓄積係数」を計算します。
計算に必要なのは、血中半減期(t1/2)と投与間の時間(投与間隔)です。
例えばビムパットの場合、添付文書2頁目右下【薬物動態】の1. 血中濃度(1)に血中半減期の情報があります。t1/2は14時間とあります。
次に投与間隔ですが、ビムパットは通常1日1回ですので、投与間隔は24時間です。

そしたら計算ですが、まずは
投与間隔=n×血中半減期
となるnを計算します。

n=投与間隔÷血中半減期=12時間÷14時間=6/7

このnを用いて、以下の式で蓄積係数を計算します。

蓄積係数=1÷{1-(1/2)n}=2.23(nは1/2のn乗です)

⇒<方法2>の(例2)の蓄積係数2.4と近い値になっていますね。

なお、定常状態に達するまでの時間は半減期の4~5倍と言われています。
半減期14時間で計算すると、56~70時間で2.3~2.9日となり、
これも<方法2>の(例2)の「3日後に定常状態に到達」に近い値となっています。

もう1つ、血中半減期が分からない場合にも計算が可能ですが、さらに難しい話になります。
「分布容積(VD)」という値と「全身クリアランス(CLtot)」という値があると血中半減期を算出することができますので、計算できるのですが、こちらはまたの機会に紹介します。
(専門性が高くなるので、★★以上の記事として紹介します)

いかがでしたでしょうか?
血中濃度シリーズをお送りしてきました。

次回から話を変えていこうと思います。
新しい薬ってどう見つけていくの?という話をシリーズでしながら、
一般向けの治療の話(しばらく書いてないので)を織り交ぜていきたいと思います。

それではまた!

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