★血中濃度

食前?食間?~食事の影響について~[★]

投稿日:2017年8月20日 更新日:

さて今回は血中濃度を用いて食事の影響について考えていきます。

お薬をもらったとき、「食前に飲んでくださいね!」、「食後●時間くらい後、食事と食事の間に飲んでくださいね!」など説明を受けたことがあるかと思いますが、これはなぜでしょうか?
前回からの引き続きですが、こちらも血中濃度が関係しています。

高血圧の薬の一つ、ラジレス錠(一般名:アリスキレンフマル酸塩錠)についてみていきますので、添付文書をダウンロードしてください。
まず服用の仕方ですが、添付文書1頁目左下の【用法及び用量】の<用法及び用量に関連する使用上の注意>(2)に以下の記載があります。

「なお、本剤は、食前(空腹時)投与で食後投与に比べ血中濃度が高くなること等を踏まえ、食後投与での開始を考慮すること。」

こちらの内容から、血中濃度が問題になっていることが分かります。
次に、具体的にデータをみてみますので、添付文書3頁目の薬物動態の右中央のグラフをみてください。空腹時投与と食後投与の場合について比較されています。
空腹時投与の方が、食後投与に比べて全体的に濃度が高くなっていますね。
↓こんな感じのグラフです。

血中濃度がどれくらい増えたか、どれくらい減ったかについてはCmaxの値とAUCの値で判断されます。
Cmaxは前回も出てきましたが、最もピークとなるときの濃度です。
AUCは下の図に示しましたが、斜線部分の面積です。
AUCが何をあらわしているかを簡単に説明すると、薬が体に入ってから完全に体からでていくまでに、どれくらい体内に薬が蓄積していたか、言い換えると体の中に蓄積した薬の総量ということになります。
(AUCはArea under the blood concentration-time curveの略で、日本語にすると「血中濃度-時間曲線下面積」と言います)

この図のように、Cmax、AUC共に食後よりも空腹時の方が大幅に増加しています。
それではなぜ、CmaxやAUCが増加するといけないのでしょうか?
これは
血中濃度が薬の効果や持続時間の指標-②[★]
でみていただいたように、薬の有効性と安全性は血中濃度で決まるからです。
例えば、至適血中濃度が下のグラフに示した範囲であったとすると、空腹時に血中濃度が増加することで、副作用が出やすい範囲に血中濃度が変動してしまい、危険だからです。

今回の薬では食後の方が血中濃度が低く、空腹時の方が血中濃度が高い薬でしたが、逆になる薬もあります。
また、今回は食後を基準にして空腹時で血中濃度があがる、という話でしたが、
逆に空腹時が至適血中濃度に近い場合、食後では血中濃度が下がるため効果が減弱する、という風に考える場合があります。

いかがでしたでしょうか?
血中濃度の重要性を分かってもらえたら嬉しいです。

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